これまで「乳腺腫瘍学」の冒頭部分で,歴代理事長の先生方より日本乳癌学会が歩んできました歴史についてご解説いただいておりましたが,今回の第 5 版より現在の理事長が代表して記述させていただくこととなった旨,ご依頼をいただきました。ここに謹んでこれまでの歩みを述べさせていただきたいと存じます。史を重ねました。乳癌研究会は年に 2 回の開催で,施設単位の参加形式で開始され,初回の参加者は 150 名であったと初代理事長でいらっしゃった坂元吾偉先生は回想されておられます。乳癌研究会では,病理,画像,薬物療法,手術・放射線療法など幅広いテーマで議論がなされ,乳腺医療の発展に大きく貢献して参りました。 この乳癌研究会を引き継ぐ形で,個人の会員を中心とした現在の日本乳癌学会が発足いたしましたのは 1992 年(平成 4 年)で,今年で 33 年目を迎えます。日本乳癌学会の設立当時の会員数は約4,500 名と現在の約半数であったと記録されております。最も会員数が多かったのは 2015 年で,9,812 名となっておりましたが,現在は 8,579 名と減少傾向にあります。 現在の乳癌学会会員の構成は,医師が 82.1%,看護師 7.5%,診療放射線技師 2.0%,薬剤師 1.5%,臨床検査技師 1.2%,そのほか 5.7%となっております。医師の専門分野の内訳は,外科 83.7%,内科 2.2%,放射線診断科 1.5%,放射線治療科 1.4%,病理診断科 1.1%,産婦人科 0.6%,そのほか9.5%となっております。また,性別構成では,女性 44.7%,男性 55.3%となっています。のは 2004 年でした。2016 年には,全国で 1,376 名の乳腺専門医が誕生している,と第 2 代理事長の園尾博司先生は記述されておられます。その後,専門医制度が定着・発展し,2025 年 2 月現在,日本乳癌学会の専門医数は 2,005 名となり,2,000 名を突破いたしました。その専門領域の内訳は,外科 95.3%,外科以外の臨床医学系 4.6%,基礎医学系 0.1%となっております。年齢構成では,45~49 歳が最も多く 16.3%を占め,続いて 50~54 歳 15.9%,40~44 歳 14.5%となっており,性別構成では,30~49 歳では女性が 70.6%を占めるのに対し,50 歳以上では男性が 78.2%を占めております。専門医全体でみますと女性の比率が 45.1%と増加傾向にあります。 各学会が独自の審査基準で専門医制度を確立した結果,その質の担保が大きな課題となりました。そこで国民および社会に信頼される専門医制度の確立を目指して,第三者機関として「日本専門1 .日本乳癌学会設立の歴史と現状 日本乳癌学会の前身であります乳癌研究会が設立されましたのは 1964 年で,それ以後 28 年の歴2 .専門医制度の確立 日本乳癌学会で専門医制度が設立されたのは 1997 年で,厚生労働省の「広告認可」が得られました3 .新専門医制度の発足xviiはじめに日本乳癌学会の歩み
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