日本乳癌学会 第七代理事長 石 田 孝 宣医機構」が 2014 年に発足いたしました。 まず,19 の基本領域が設定され,2018 年から各基本領域間で統一された認定基準により新専門医制度が正式に開始となりました。乳腺領域では,前述のように外科系医師が専門医に占める割合が高いことから厚生労働省,日本専門医機構の指導により,1 階建て部分の基本領域を外科におき,2階建て部分のサブスペシャルティの一つとして開始されました。 2 年間の初期研修終了後,1 階建て部分の外科プログラムで 3 年間外科研修を行います。この外科プログラムの 2 年目,3 年目の研修実績(手術経験や学会・論文発表など)を 2 階建て部分の乳腺外科カリキュラムで共用できる「連動研修」システムを 6 つの外科サブスペシャルティ領域でいち早く導入し,2022 年 4 月から正式に開始いたしました。この結果,乳腺領域では,最短で医学部卒業後6 年で 2 階部分の乳腺外科カリキュラムまで修了することができ,7 年目に「乳腺外科専門医」の試験を受けることができます。この結果,すでに全国で 96 名の「乳腺外科専門医」が誕生しており,2024年の専門医試験では,合格者の半数以上を「乳腺外科専門医」が占めるようになってきました。 この結果,乳腺領域からは,従来の学会認定である「乳腺専門医」と日本専門医機構認定の「乳腺外科専門医」が並列で存在することとなり,厚生労働省,および日本専門医機構から,今後もこの状況を継続する方針が打ち出されています。「乳腺専門医」の外科系は,一定の基準を満たせば,「乳腺外科専門医」に移行することが可能で,移行を望まない外科系の「乳腺専門医」,および外科系以外の「乳腺専門医」は,引き続き,日本乳癌学会認定の専門医としてご活躍いただく予定です。 乳腺診療は,腫瘍内科を中心とする内科系,放射線診断科,放射線治療科,産婦人科,病理科など幅広い診療科の連携によって成立する診療特性があります。将来的には,幅広い基本診療科の 2階建て部分として「乳腺専門医」が位置付けられるか,あるいは 1 階建て部分として「乳腺専門医」が認定され,その 2 階建て部分に関連各領域の乳腺サブスペシャルティが位置付けられることが望ましいと考えています。 乳癌領域においては,サブタイプに応じた新薬の開発や外科領域・放射線領域をはじめとする新規医療技術の発展は目覚ましく,遺伝医療では BRCA1/2 をはじめとする乳癌関連遺伝子の解析が進み,日本人データの蓄積とともに,予防切除などの予防医療や薬物療法選択のコンパニオン診断として,その重要性が増しています。さらに,AI 技術の応用や医療 DX の導入など,これからますます力を入れていくべき課題が山積しています。これらの新たな技術は,乳癌診療の方法や内容,そして働き方を大きく変える可能性を秘めており,各分野・各領域の専門家の皆様と連携して早急に開発に取り組んでいく必要があります。 乳癌患者様やそのご家族が安心して医療を受けられる環境の基盤を整備するために,そして医療に携わるすべての皆様が心身ともに健康で充実した環境で診療や研究ができますよう日本乳癌学会としても全力を尽くして参りたいと考えております。 2025 年 6 月 xviii4 .専門医制度の目指す方向性5 .これからの日本乳癌学会
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