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56となる残存変形に対する許容範囲は前述した青壮年者の基準値より高齢者では大きくなるが,明確なものはない。3)治療方針手術療法において各種固定方法の間にX線評価ならびに患者立脚型評価の差異は認めないとする強いエビデンスが示されている2, 3)。しかし,現在は掌側からのロッキングプレート固定が世界的に広く受け入れられており2),短期(3〜6ヵ月時点)ではあるが他の固定方法と比べて早期の機能回復が期待できる強いエビデンスがある2-4)。a Colles骨折関節外・内骨折を問わず,徒手整復操作を加えて残存する転位から治療法の選択を行う。最近のレビューでは手術対象に対する術前の徒手整復は疼痛減少や良好な臨床成績につながらないため行うべきではないと記載されているが2),筆者は骨片による神経組織への圧迫軽減,動脈血行や静脈還流の改善を目的として開放骨折以外は最初に徒手整復を試みている(図Ⅱ-1.1)5)。関節外骨折では前述した遺残転位や骨折部に多骨片(AO/OTA分類A3型)を認める場合は掌側ロッキングプレート(PLP)固定を実施する。ただし,A3型に対するPLPの単独固定では橈骨長の短縮が生じかねず,粉砕した掌側骨皮質骨片を近位から〔文献5)より引用〕abcb 左手で手関節部を背側から握り手部背側を掌側(矢頭)へ,右母指で前腕掌側を背側(矢印)へ押し込み,骨折部の掌側凸変形を矯正する。c 術者の左母指で遠位骨片背側を圧迫しつつ,患者の右手関節を十分に掌尺側へ屈曲して整復する。図Ⅱ-1.1 右側罹患例の整復操作a 術者は右手で患者の母指を,左手で示〜小指を握り牽引する。助手は直角に曲げた肘関節を把持し,対向牽引を加える。橈骨茎状突起(実線)が尺骨茎状突起(点線)の約1cm遠位に確認できれば短縮転位は整復されたと判断する(両端矢印)。

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