25167T
9/10

4.免疫療法 1154)がんワクチン療法免疫細胞の活性を向上させるため,抗原提示細胞,抗原を体外から導入することで免疫系の活性化を図る治療法:がんペプチドワクチン療法,樹状細胞ワクチン療法など様々な悪性腫瘍に対して多くの臨床試験が行われているが,このうち悪性軟部腫瘍の臨床に関連する治療法を説明する。【TCR-T療法】がん抗原に特異的に反応するキラーT細胞クローンを樹立し,そこから得られたがん抗原特異的TCR遺伝子を末梢血リンパ球に体外で遺伝子導入して輸注する。標的となる抗原は悪性軟部腫瘍ではNY-ESO-1, MAGEファミリーなどが報告されており,滑膜肉腫や粘液型脂肪肉腫におけるNY-ESO-1の陽性率は高い27)。転移性滑膜肉腫に対するNY-ESO-1 TCRはいくつかの臨床研究27-29)で有効性が報告され,治療法の候補となる可能性がある。【CAR-T療法】人工的なキメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞に導入して体外で大量に作成し輸注する。造血器腫瘍で効果を示したものの30),現在のところ悪性軟部腫瘍を含めた固形腫瘍では十分な効果を示せていない。【免疫チェックポイント阻害薬】T細胞の免疫応答を抑制する受容体や,リガンドを阻害することによりT細胞を活性化させる。悪性軟部腫瘍でも他の癌腫と同様,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体による臨床試験31-35)が行われてきたが単剤での効果は限定的であり,複合免疫療法などの開発が行われている36, 37)。現在,悪性軟部腫瘍に承認されている免疫チェックポイント阻害薬はない状況であるが,マイクロサテライト不安定性(MSI-high)を有する場合はペムブロリズマブ38)が保険承認されているため使用可能である。また高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する場合も,ペムブロリズマブ39)が使用可能である。

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る