Ⅰ
参考文献
1) 上田晃一. 創傷形態からみた処置法, 顔面四肢外傷
治療のABC, 形成外科, 49: S67-S72, 2006
[Ⅴ]
2) Stevens MA. Imaging features of avulsion
injuries. Radiographics, 19: 655-72, 1999
[Ⅳ]
3) 佐々木健司. 急性創傷: 急性創傷の分類と診断, 形
成外科, 51: S39-S46, 2008
[Ⅴ]
CQ
15
陰圧閉鎖療法有効?
推奨
(~
)
根拠・解説
全層皮膚欠損創の創傷治癒促進には,湿潤環境(Moist Wound Healing)が必要であ
る
1-4)
。急性創傷において,WBP(Wound Bed Preparation)理論
注1)5, 6)
やTIMEコンセプト
注2)
に
基づく保存的治療を行えば十分に創傷は治癒する
7, 8)
。陰圧閉鎖療法を
9, 10)
,急性創傷しかも広く深い
創傷に使用することで,良好な肉芽組織をすみやかに得ることができ短期間の創傷治癒期間を得る
9-11)
。
陰圧閉鎖療法とは,創傷面を閉鎖環境で陰圧50~150mmHgで余剰浸出液を吸引し,細菌自体やそ
の外毒素の排泄作用や肉芽組織の血管新生作用,浮腫軽減作用を有し,WBPには最適なツールと思
われ,その創傷治癒促進の有効性について,非ランダム化比較試験等の多くの文献がある
9-12)
。
剥脱創に皮膚欠損創がある場合も同様によい適応である。皮膚剥脱され露出した腱・靱帯の表面
は,陰圧閉鎖療法により良好な肉芽組織で被われるため,手術再建の難しいデグロービング損傷(下
肢等)への有用性を報告した文献がある
12-16)
。露出した腱や骨を認める感染創に,持続洗浄を付加し
た陰圧閉鎖療法も開発され効果を得ている
17)
。血行不安定な剥脱組織では,縫合し過度に緊張させ
壊死させるより,剥脱された皮膚をドナーとして使用する“もどし植皮術”を行い,植皮固定法とし
て陰圧閉鎖療法の有用性を述べている
13-16)
。さらに,一期的に下肢の大きな剥脱創に人工真皮と陰
圧閉鎖療法だけで良好な創傷治癒を認めたという文献
17)
や,同種真皮と自家分層植皮を組み合わせ,
陰圧閉鎖療法による植皮固定がタイオーバー法より,生着結果と外観で優れていたとの文献があ
る
18, 19)
。
注 1)WBP(Wound Bed Preparation)理論: Wound Bed Preparationは創面環境調整の意味で,創傷治
癒促進に対してよりよい環境を整えること,例えば壊死組織のデブリードマンと浸出液の調整を行い感染
予防に努めながら,最適な湿潤環境を作ること。
注 2)TIMEコンセプト(WBPの実践的指針):TIME はT: Tissue,I: Infection ,M: Moist,E: Edgeの
4項目の頭文字。4項目のアセスメントと実践で,WBPを整え創傷治癒を導く管理(壊死不活性化組織管理,
感染炎症管理,浸出液管理,創傷辺縁管理)。