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1章リンパ浮腫1リンパ浮腫の鑑別診断についてリンパ浮腫は直接的な病因を伴わない原発性リンパ浮腫と,外傷や手術,フィラリア症などに引き続いて発症する続発性リンパ浮腫とに分類され,本邦を含めた先進諸国では,リンパ節への手術操作や放射線照射を伴う悪性腫瘍の治療後に生じる続発性リンパ浮腫の割合が高い。原発性リンパ浮腫はさまざまな除外診断が重要であるとされてきたが(図1),続発性リンパ浮腫が考えられる場合であっても,化学療法の影響や,癌サバイバーの長期経過後症例が増加する中,鑑別診断に挙げられる病態の合併の可能性も考慮して診察にあたる必要がある。とくに,鑑別診断の中に,静脈のうっ滞や脂肪の蓄積など,リンパの流れにも大きく影響を及ぼす病態が存在することに注意が必要である。すなわち,リンパの運搬は生体における体液循環の一部として機能しているため,リンパ浮腫と,リンパ浮腫以外の浮腫の原因とは,合併したり,病態に影響を及ぼし合ったりしていることを踏まえて,リンパ浮腫の評価を行わなければならない。リンパ浮腫の診断・評価を行うにあたっては,「a)浮腫によって生じる組織変化を評価する視点」と,「b)リンパのうっ滞に基づく浮腫の程度を評価する視点」,さらには「c)リンパの流れの可視化」により,リンパ管静脈吻合術の適応や治療計画も含めた評価を行う視点のいずれもが重要である。「①浮腫によって生じる変化」は,体積や組織の電気的な性状,粘弾性などの物性など,リンパ浮腫に限らず観察されうる。これに対し,「②リンパのうっ滞に基づく浮腫の程度の評価」とは,リンパの運搬能や皮膚への逆流(Dermal back fl ow)を観察することで,リンパの流れの停滞そのものを観察することによって行われる評価を指す。病歴や理学所見から続発性リンパ浮腫であることが明白である場合,非侵襲的,鋭敏,簡便な評価第■編 リンパ浮腫診療ガイドライン図1 浮腫の鑑別診断リンパ浮腫の診断・評価のCQ設定と解説文作成の方針・急性深部静脈血栓症および 深部静脈血栓後症候群・関節炎・悪性腫瘍の浸潤・心不全・静脈機能不全症・廃用性浮腫・肝機能障害・腎機能障害・低蛋白血症・甲状腺機能低下症・その他の内分泌疾患・薬剤性浮腫・脂肪性浮腫・炎症性疾患局所の浮腫に影響する疾患全身性の浮腫に影響する疾患 診断

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