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■参考文献1) Grob JJ, Rava MC, Gouvernet J, et al. The relation between seborrheic keratoses and malignant solid tumours. A case-control study. Acta Derm Venereol. 71:166-9, 19918第Ⅰ編 皮膚軟部腫瘍診療ガイドライン■推奨の強さと根拠 2C(弱い推奨,弱い根拠)2) Lindelöf B, Sigurgeirsson B, Melander S. Seborrheic keratoses and cancer. J Am Acad Dermatol. 26:947-50, 19923) Holdiness MR. The sign of Leser-Trélat. Int J Dermatol. 25:564-72, 1986このように,Leser-Trelat徴候と内臓悪性腫瘍の関連性は乏しいとする報告がある一方で,個々の症例報告ではその関連性が指摘されている。Holdinessは過去に報告された文献の中から,Leser-Trelat徴候を認め,悪性腫瘍が確認された51例を対象とした症例集積研究を行っている。悪性腫瘍の種類は58.8%が腺癌で40%が胃の腺癌,以下悪性リンパ腫,乳管癌,肺の扁平上皮癌(squamous cell carcinoma:SCC)の順であったと報告しており,さらにそのうち転移を来していたのは29%と高率で,癌の進行と脂漏性角化症の出現に何らかの関連性が推測される3)。その他,癌の縮小に伴い脂漏性角化症が消失した例4, 5)や,尿中のEGF(epidermal growth factor)値が上昇していた例6),潜在的な腎癌を発見された例7)や結腸直腸癌を発見された例8)などが報告されている。また一般的に脂漏性角化症と癌の罹患は高齢者に多く,両者の混在が病的な意義をもつかどうかについては議論があるが,20歳代の若年者に多発した脂漏性角化症と骨原性肉腫を認めた症例も報告されている9)。以上のことから,多発する脂漏性角化症は必ずしも内臓悪性腫瘍を疑う根拠にはならないが,短期間で急速に発生したものや,若年者の発症は内臓悪性腫瘍を念頭に置き,注意深く経過観察することが推奨される。4) Heaphy MR Jr, Millns JL, Schroeter AL. The sign of Leser-Trélat in a case of adenocarcinoma of the lung. J Am Acad Dermatol. 43:386-90, 20005) Li JH, Guo H, Li B, et al. Leser-Trelat sign with primary hepatic carcinoma. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 81:320-1, 20156) Kameya S, Noda A, Isobe E, et al. The sign of Leser-Trélat associated with carcinoma of the stomach. Am J Gastroenterol. 83:664-6, 1988に発生したものや,若年者の発症は悪性腫瘍を念頭に置き,注意深く経過を観察することが推奨される。 根拠・解説 内臓悪性腫瘍に伴って生じる多発性の脂漏性角化症のことをLeser-Trelat徴候と定義されている。Grobらは40歳以上の脂漏性角化症と診断された患者の中で3カ月以内に固形悪性腫瘍が指摘された82人と,同人数の対照群を抽出した症例対照研究を行っているが,脂漏性角化症の数,および大きさにおいて両群で有意な差を認めなかった1)。またLindelöfらは1,752人の脂漏性角化症患者の症例対照研究において,同症と診断された前後1年以内に癌に罹患した62人を検討している。そのうち6人でLeser-Trelat徴候の基準を満たしたが,明らかに関連性を疑われたのはそのうち1人だけであった。さらに62人の癌に罹患していない脂漏性角化症患者のうち5人がLeser-Trelat徴候の基準を満たしていたと報告している2)。 今後の課題 本邦においても,症例対照研究の検討が必要である。

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