4紫外線防御により発生を抑制できるか?■推奨■推奨の強さと根拠 2C(弱い推奨,弱い根拠)Ⅰ17) Vielhauer V, Herzinger T, Korting HC. The sign of Leser-Trélat:a paraneoplastic cutaneous syndrome that facilitates early diagnosis of occult cancer. Eur J Med Res. 5:512-6, 20008) Chakradeo K, Narsinghupura K, Ekladious A. Sign of Kavakらは148人のトラック運転手の日光曝露側と非曝露側を比較検討し,日光曝露側の顔と耳でそれぞれ脂漏性角化症と日光黒子が有意に増加していると報告している4)。ドイツに住む1,232人の小児を3年間追跡したコホート研究では,日常の活動性や夏の休暇中の旅行先などを加味した結果,紫外線曝露量と色素性母斑の発生について関連を認めるとしている。ただしこの報告では98.5%がドイツ人であり,ある特定のスキンタイプをもった者が色素性母斑の発生を有意に多く認めている5)。またオーストラリアに住む652人の小児を3年間追跡したコホート研究では,期間中に2個以上の色素性母斑の発生を認めた307人は,1個以下であった345人に比べて,夏場の紫外線曝露時間が有意に長く,曝露機会が有意に多かったと報告している。さらに2個以上の色素性母斑を認めたグループでは,サンスクリーン剤を使用している割合が1個以下のグループに比べて有意に低かったとし,これらのことから紫外線曝露と色素性母斑の発生には明確な因果関係を認めると述べている6)。コホート研究を行った2つの文献は対象数も多く信頼性は高いと思われるが,いずれもドイツとオーストラリアという似たスキンタイプをもつ民族を対象としており,スキンタイプの異なるその他の民族に関しては違う結果が出る可能性も考えられる。Leser-Trelat. BMJ Case Rep. 2016:bcr2016215316, 20169) Barron LA, Prendiville JS. The sign of Leser-Trélat in a young woman with osteogenic sarcoma. J Am Acad Dermatol. 26:344-7, 19923)疫学1章 上皮系良性腫瘍(色素性母斑を含む)紫外線防御により上皮系良性腫瘍の中でも色素性母斑や脂漏性角化症の発生は抑制できる可能性は高い。しかし紫外線曝露による皮膚への影響は,地域やスキンタイプによって異なるため,必ずしも効果があるとは言い切れない。 根拠・解説 紫外線を浴びた皮膚には脂漏性角化症や日光角化症が発生しやすいことが指摘されている。脂漏性角化症は紫外線曝露部の角化細胞が,繰り返される日焼けのために紫外線による遺伝子損傷を正しく修復できない状態が重なり,その結果角化細胞の増殖に異常が生じて発症すると考えられている1)。また,紫外線UVBの曝露によりEDN-1の分泌が亢進し,老人性疣贅や皮膚の色素沈着増強が生じるとの報告がある2)。特に小児では細胞分裂が盛んで遺伝子の変異が生じやすいと考えられており,小児期からの紫外線防御対策が重要と考えられる3)。 今後の課題 欧米では研究対象症例数が多いが,人種が異なるため参考とはならない,本邦においてCQ9
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