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E.漿液粘液性腫瘍 Seromucinous tumors1.良性 Benign2.境界悪性Borderlinea.漿液粘液性嚢胞腺腫 Seromucinous cystadenomab.漿液粘液性腺線維腫 Seromucinous adenofibroma複数種類のミュラー管型上皮細胞の混合で構成される稀な良性腫瘍である。組織発生的に子宮内膜症との関連が示唆されている。 病理所見 肉眼的に,腺腫は単房性ないし少房性嚢胞性腫瘤を,腺線維腫は充実性腫瘤または内膜症性嚢胞壁に結節を形成する。組織学的に,線毛を有する卵管型上皮,子宮頸管腺型上皮,内膜腺型上皮およびそれに付随する扁平上皮,淡明な細胞のうち,複数種類の細胞が様々な割合で混合あるいは移行して,腺管や嚢胞を形成して増殖する。胃・腸型上皮細胞を認めることはない。腫瘍細胞は単層に配列し,異型を欠くか軽度の異型を示す。腺線維腫では,間質の線維性増殖を伴う。a.漿液粘液性境界悪性腫瘍Seromucinous borderline tumor (図譜47〜49)複数種類のミュラー管型上皮細胞が混合する境界悪性腫瘍である。30代後半に好発する。高頻度に子宮内膜症性嚢胞を伴い,予後は良好である。かつて粘液性境界悪性腫瘍内頸部様 endocervical-like mucinous borderline tumorやMülle-rian mucinous borderline tumorとよばれていたが,これらの名称は推奨されない。半数以上の症例にKRAS変異を,一部の症例ではARID1A変異を認める。 病理所見 肉眼的に,単房性ないし少房性嚢胞性腫瘤で(平均径9 cm),嚢胞内に乳頭状成分を有する。ときに卵巣表面から外向性に乳頭状に増殖することもある。約30%が両側性である。組織学的に,腫瘍細胞が階層性を有する乳頭状構造(枝分かれをするたびに間質が狭細化する乳頭状構造)を形成して増殖し,漿液性境界悪性腫瘍に類似した構築を呈する。間質は浮腫性ないし線維性で,しばしば好中球浸潤がみられる。腫瘍細胞は,線毛を有する卵管型上皮,細胞質内粘液を有する子宮頸管腺型上皮,内膜腺型上皮およびそれに付随する扁平上皮,好酸性細胞質ないし淡明な細胞質を有する上皮,hobnail型細胞のうち複数の種類の細胞が様々な割合で混合し,重層化や内腔への分離増殖を呈する。胃・腸型上皮細胞を認めることはない。細胞異型は軽度ないし中等度で,核分裂は少ない。漿液性境界悪性腫瘍でみられる「微小乳頭状構造」を示すものもある。高頻度に子宮内膜症を合併し,類内膜腫瘍や明細胞腫瘍との共通性を示す。稀に卵巣外にも病変を認め,その場合の取扱いは漿液性境界悪性腫瘍に準じる(24頁)。 概 要 概 要 33

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