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CQ 05肉眼的に大網転移を認めない患者に対して,大網切除術は 勧められるか?推奨76 第2章 初回治療(特殊組織型を含む)肉眼的に大網転移を認めない子宮体癌患者に対する大網切除術の診断的・治療的意義と適応について検討する。病理組織学的に大網転移が確認された場合は手術進行期ⅣB期となり,術後の治療法を選択する上で重要な情報となる。正確な手術進行期決定のためには,全例で慎重な大網の術中検索を行うべきであるが,surgical stagingにおける大網切除術の意義に関しては以前より多くの後方視的検討・報告がなされている。肉眼的に大網転移を認めないⅠ期が推定される症例において,顕微鏡的大網転移の頻度およびリスク因子を明らかにする目的で,2014年までに発表された10論文1-10)のメタアナリシスの結果が報告されている11)。それによると,1,163例中22例(1.9%)に顕微鏡的大網転移を認め,すべての大網転移例に占める割合は27%であった。リンパ節転移陽性,付属器転移陽性,虫垂播種(インプラント)が顕微鏡的な大網転移と強く関連していたことから,これらのリスク因子を有する例には大網切除術が推奨されるとしている。深い筋層浸潤,腹腔細胞診陽性,類内膜癌G3については顕微鏡的大網転移との関連は認めるものの,有意な因子とはならなかった。これらの因子を有する症例に対しては個別に大網切除術の適応を検討する必要があろう。一般的に類内膜癌よりも生物学的悪性度が高い特殊組織型(漿液性癌,明細胞癌等)では大網転移の頻度も高い傾向12)にあるため大網切除術が考慮される一方で,画像および臨床的に大網転移を疑わない39例の漿液性癌の症例においては,1例も大網転移を認めなかったとする報告もある13)。治療的意義に関しては,これまでに大網切除術が単独で予後を改善させるという明らかな当初は推奨文に「深い筋層浸潤」や「腹腔細胞診陽性」の文言が入っていたが,合意率は38%であった。「腹腔細胞診陽性」に関しては解説内に記載がなく,また推奨と解説の内容の一部が一致しないとの意見があり,修正した結果,合意率81%となった。▶▶▶目 的▶▶▶解 説最終会議の論点特殊組織型または類内膜癌G3と考えられる場合あるいは術中に子宮外病変を認める場合には,ステージング手術手技として大網切除術を提案する。推奨の強さ  2(↑)   エビデンスレベル  C   合意率81%(13/16人)

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