良因子であったと指摘している。Liら19)は333例のART群を後方視的に検討したが,腫瘍径は予後因子とならず組織型(腺扁平上皮癌)のみが有意な予後不良因子(p<0.05)であったと報告している。同様にART群を解析したMachidaら21)は腫瘍径2cm以上,リンパ節転移,深い間質浸潤のいずれかが指摘された場合,5年無病生存率と有意に不良であった(HR5.47,95%CI1.68-17.8,p=0.001)と報告している。上記のように,広汎子宮頸部摘出術の治療効果については一貫性がみられるが,その術式を比較した報告では術式別に異なるリスクが報告される。概ね,広汎子宮頸部摘出術は広汎子宮全摘出術に劣らない腫瘍学的予後が示されるが,年齢(40歳,45歳),組織型(腺扁平上皮癌),腫瘍径(2cm),術式(腟式,腹式,低侵襲手術)および術前・術後補助療法(術前化学療法の安全性,中リスク因子数,化学療法レジメン・サイクル数)については想定されたCQの設定を含めて検討する必要がある。エビデンスの確実性:B(中) 5 周術期合併症の発生率 本アウトカムをエンドポイントとするRCTはなく,すべてが後方視的観察研究であった。無病生存期間をエンドポイントとした報告から1編の後方視的コホート研究3)および2編のメタアナリシス12,17)が抽出された。広汎子宮全摘出術と広汎子宮頸部摘出術を比較した報告が2編,腹式広汎子宮頸部摘出術を施行した報告が1編含まれており,この中で本アウトカムと直接的に関連する記載が認められた。単群研究が含まれ,primaryendpointに合併症が設定されていない報告も含まれているため,バイアスリスクは高く,本アウトカムに対する高いレベルの推奨を与することは困難である。Prodromidouら12)は,ⅠA2〜ⅠB期のARTもしくはARHが施行された計840例を比較したメタアナリシスの中で術中,術後を含めて両群に周術期合併症の発生に有意差はなかった(術中合併症:OR3.10,95%CI0.79-12.15,p=0.10,術後合併症:OR1.52,95%CI0.77-3.02,p=0.23)と報告している。同様に,45歳以下のⅠA2期,ⅠB1期のARTとRHの計329例を比較した後方視的コホート研究3)では,周術期合併症について,る必要がある。エビデンスの確実性:B(中)全生存期間をエンドポイントとした報告のうち8編の後方視的コホート研究1,3,4,18-22)と2編のメタアナリシス8,12)が抽出された。抽出された報告はすべて後方視的研究であり単群研究(3編)も含まれていることを考慮し,本アウトカムに対する推奨レベルを決定した。Prodromidouら12)は,子宮頸がん(扁平上皮癌,腺癌,腺扁平上皮癌),IA2〜IB期の生殖可能年齢の患者に対して,324例の開腹広汎子宮頸部摘出術(ART)と516例の開腹広汎子宮全摘出術年全生存率(OR1.39,95%CI0.53-3.62,p=0.51)および全生存率(OR0.81,95%CI0.25-2.65,p=0.73)に有意差は認められなかったと報告している。同様に,Guoら3)はIA2〜IB1期に対するART群およびARH群を後方視的に比較し,ART群は3例(2.2%),RH群は4例(2.3%)の再発を認めたが統計学的有意差は認められなかった(p=0.999)と報告している。Yoshinoら1)も同様の2群を比較し5年生存率はART群97.3%とRH群95.3%で有意差はなかった(p=0.44)と報告している。これらの報告からARTとARHは同等な治療効果があると考えられる。広汎子宮頸部摘出術(RT)を術式別(ART,経腟広汎子宮頸部摘出術:VRT,腹腔鏡下広汎子宮頸部摘出術:LRT)に計2,566例を比較したメタアナリシス21)では,ART群,VRT群,LRT群の全生存率は97.4%(95-99%)で良好であると報告する。同様にSalvoら18)はART群,LRT群を比較し,4.5年生存率はART群99.2%(95%CI97.6-99.7),LRT群99.0%(95%CI79.0-99.8)と報告し有意差は指摘されていない(p=0.49)。一方,ART例に再発は認められなかったが,VRT例は死亡率が有意に高い(p=0.035)との報告がある4)。同様にLRT例を後方視的に検討したParkら20)の報告では腫瘍径2cm以上(p=0.039)および深い間質浸潤(p=0.016)は有意に予後不良因子であったと報告し,Cuiら22)もART群において腫瘍径2cm以上は有意に予後不 4 全生存期間 (ARH)を解析したメタアナリシスの中で両群の5110
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