女性生殖器111出血(p=0.79),術中他臓器損傷(p=0.26),術後合併症(p=0.66),月経不順(NA)に両群間で有意差はなかったと報告している。一方,ⅠA〜ⅡA期のARTが施行された計485例を単群で解析したメタアナリシス17)では,術後合併症の有無を確認できた438例中155例(35.4%)に術後合併症があったと報告している。その頻度は,頸管狭窄42例(9.5%),抗菌薬を必要とした感染症38例(8.6%),リンパ囊胞26例(5.9%)でありARTの術後合併症には注意を要することが示唆される。同様に,RTを施行され無病期間1年以上が経過した計39例にアンケート調査を施行した報告5)では,合併症発生率は74%で,頸管狭窄(33%)の割合がさらに高いことにも留意する必要がある。上記のように,ARTの術中合併症はARHと有意な違いは報告されず一貫性があるが,術後合併症の内容と頻度は報告により異なることに注意を要する。今後,術後合併症がその後の周産期管理に与える影響について情報収集の検討が必要である。エビデンスの確実性:B(中) 6 周産期合併症の発生率 抽出された文献は観察研究1編6),既存のシステマティックレビュー6編8,9,11,12,15,16)であり,RCTは抽出されなかった。文献ごとに周産期合併症の項目に違いがあり統一して全体の周産期合併症として算出することは困難であった。その中で,ほとんどの文献で挙げられた合併症である流産と早産について,1編の観察研究では流産率が15%,32〜37週の早産率が26%であった。既存のシステマティックレビューでは,流産と早産の週数による詳細な分類は文献ごとに異なっていたため流産と早産を週数によらず一括して検討した。流産率は21〜24%であり,早産率は25〜36%であった。観察研究とシステマティックレビューともに広汎子宮頸部摘出術以外の治療と比較した文献はなかった。広汎子宮頸部摘出術の術式(開腹,腟式,腹腔鏡,ロボット支援)が混在しており,それぞれの術式ごとに周産期合併症を算出している文献や術式間で比較した文献が多くみられた。システマティックレビューには円錐切除術を含む文献が2編あり,円錐切除術例を除外して結果を算出する必要があり,術式の詳細が記載されていない文献も認められた。エビデンスの確実性:B(中) 7 費用対効果費用対効果を評価した研究は抽出されなかったため,評価不能とした。 8 患者・市民の価値観・希望,QOL患者のQOL評価をエンドポイントとした報告として2編の後方視的コホート研究5,23)が抽出された。これらの報告では,本アウトカムをエンドポイントとしているが,広汎子宮頸部摘出術が施行された症例のアンケート結果を検討した単群研究の後方視的観察研究であり,症例数および回答率が比較的少ないことからバイアスリスクは高い。また,報告による一貫性も乏しく,本アウトカムに対する高いレベルの推奨を与することは困難である。Shahら5)は,広汎子宮頸部摘出術を施行され無病期間1年以上が経過した計39例にアンケート調査を施行した中で,18人(46%)が不妊治療についてのカウンセリングを受け,26人(68%)が妊娠リスクについてのカウンセリングを受けていたと報告している。カウンセリングを受けることで85〜88%の患者が満足を得られたとされ,手術前後で妊娠を希望する割合に有意な変化はなく(術前5人,術後6人),術前後の不安度も大きな変化は認められなかった(術前5人,術後7人)と報告している。一方,広汎子宮頸部摘出術を施行された計151例に対してアンケート調査(回答率30%)を施行した報告23)では,治療後に妊娠を希望しなくなったのは13例(28%),性交痛の悪化が認められたのは14例(30%),性交への恐怖を覚えたのが19例(41%),性交渉が減少したのが24例(52%)とされる。これらの報告は本CQとの直接性は高いが,上記のように報告により術前後の心境の変化の頻度は異なり,症例数も少ないことから,治療後の心理的フォローに十分に留意する必要がある。エビデンスの確実性:C(弱)
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