第2章 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌 清群ではより多くの転移リンパ節が摘出されていると考えられた。しかし,系統的リンパ節郭清は OS, PFS のいずれの改善にも寄与しなかった(OS:HR 0.85, 95%CI 0.49-1.47, PFS:HR 0.72, 95%CI 0.46-1.21)。この試験は RCT であるものの,手術の質が担保されていない,郭清群において片側の腫瘍に対しては片側のみのリンパ節郭清が許容されている,主要評価項目が OS ではなくリンパ節転移の有無である,といった問題点が存在する。早期卵巣癌の後方視的検討やメタアナリシスではリンパ節転移を平均 14.2%(3.0 ~29.6%)に認め,骨盤リンパ節単独転移を 2.7 ~ 2.9%,傍大動脈リンパ節単独転移を 7.1 ~7.3%,骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節双方への転移を 4.3%に認めており,リンパ節郭清は早期卵巣癌において正確なステージングに寄与する 5-7)。組織型別・Grade 別にみた後腹膜リンパ節への転移頻度に関して,組織型では漿液性癌で頻度が高く(22.5 ~ 23.3%),粘液性癌や低異型度の類内膜癌で頻度が低く(0 ~ 2.6%),Grade は高いほど頻度が高いと報告されており,NCCN ガイドライン 2024 年版では粘液性癌に対するリンパ節郭清の省略が考慮されると記載されている 1, 5, 6)。現在,早期卵巣癌に対するリンパ節郭清の生存への寄与を検討した RCT が進行中である(NCT04710797)。大網の切除法には,横行結腸下で切除する大網部分切除術,胃大網動静脈直下で切除する大網亜全切除術,胃大網動静脈も切除する大網全切除術がある。三者のうち,どの術式が最も推奨されるかを示す文献はない。しかし,臨床的に早期と推定される卵巣癌と診断された患者の後方視的検討では 2 ~ 22%に大網転移があることから,早期卵巣癌に対しても大網部分切除術は必須である 2, 3, 8)。臨床的に早期と推定される卵巣癌と診断された患者の後方視的検討から腹膜のランダム生検を行った結果,0.8 ~ 4.7%がⅡ期に,2.4 ~ 3.8%がⅢA2 期にアップステージしたとの報告がある 8, 9)。腹腔内各所の生検を積極的に行うことは,正しい進行期の決定に寄与する。開腹時に腹腔内各所を十分に観察し,播種病巣を疑う場合には,ダグラス窩,膀胱腹膜,左右骨盤側壁,左右傍結腸溝,右横隔膜の腹膜生検(右横隔膜腹膜は擦過細胞診でも可)が提案される 1, 10)。虫垂は,粘液性癌の場合において虫垂原発癌との鑑別のため切除術を考慮する 11-13)。卵巣の粘液性癌では 42 例中 2 例(5%)が虫垂癌からの転移との報告がある 14)。卵巣癌における虫垂切除の診断および治療的意義は確立していないが,2.8%に肉眼的に正常な虫垂への転移を認めたという報告がある 11)。一方で,肉眼的に虫垂に異常がなければ,粘液性癌でも虫垂切除は不要との報告もある 1, 13)。癌の広がりを検索する staging laparotomy は,病理組織学的に進行期を決定し,術後治療の適応となる患者を抽出する観点から勧められる術式であるが,staging laparotomy 自体が予後を直接改善するかどうかのエビデンスは未だにないのが現状である 4, 7, 14-16)。参考文献721) Ovarian Cancer Including Fallopian Tube Cancer and Primary Peritoneal Cancer(Version 3.2024). NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology.https://www.nccn.org/guidelines/category_1(ガイドライン)【委】
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