基本診察a)他覚的検査61■また,各外眼筋が単独で麻痺した場合の代償頭位は,実際には起こり得ないが各外眼筋が正面視(第一眼位)で単独で働いたと仮定した時に起こる眼球運動の方向と一致する.特に滑車神経麻痺では,この上斜筋麻痺の代償頭位の所見が診断に役立つ.■眼位検査には,他覚的検査と自覚的検査がある.■Hirschberg試験:ペンライトの光を両眼に当て,角膜反射の位置で眼位を観察する(図2〜6).■交代遮閉試験:ペンライトなどの視標を固視させて左右交互に遮閉を繰り返し,正中位へ戻る眼球の動きで眼位を観察する(図7).A 眼球運動の診察 ▪頭部を傾ける:滑車神経麻痺,ocular tilt reaction(眼頭部傾斜反応) ▪頭部を回転する:外転神経麻痺,先天眼振 ▪顎を上げる,下げる:垂直注視麻痺,垂直筋麻痺 ▪内直筋麻痺(内転作用):頭部を反対側へ回転する ▪外直筋麻痺(外転作用):頭部を同側へ回転する ▪上直筋麻痺(上転作用,内方回旋作用,内転作用):顎を上げ,頭部を反対側に傾けて反対側へ回転する ▪下直筋麻痺(下転作用,外方回旋作用,内転作用):顎を下げ,頭部を同側に傾けて反対側へ回転する ▪上斜筋麻痺(下転作用,内方回旋作用,外転作用):顎を下げ,頭部を反対側に傾けて同側へ回転する ▪下斜筋麻痺(上転作用,外方回旋作用,外転作用):顎を上げ,頭部を同側に傾けて同側へ回転する32 眼位検査■眼球運動制限があると正面位で眼の位置に異常が出現する.外転神経麻痺と開散麻痺は内斜視,動眼神経麻痺と輻湊麻痺は外斜視,滑車神経麻痺とskew deviationは上下斜視となる.ただし,外眼筋の機械的運動制限では正面眼位に変化がないことも多く,眼球運動神経麻痺との鑑別点となる.
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