210はじめての起業 東日本大震災のMission Vision Van 事業を成功させ、被災地支援も一段落した2012年、私が慶應義塾大学医学部眼科学教室の教授になってから8年目、こんどは私が専門とするドライアイの領域をどうにか産業化することができないか考え始めました。 産業化するには、まずは会社を立ち上げなければならないと考えたのが起業の第一歩です。ただ、そのときはまだ大きなビジョンはなく、会社をつくるにはどうすればいいかというところから始まっています。 私の師匠に当たるシェファー・ツェング教授に相談に行くと、事業計画書を書くところから始めなさいとアドバイスを受けます。そこで、事業計画書の書き方がさまざまな角度から解説されている書籍を10冊ほど購入し、それを読み漁りながら事業計画書を懸命に書きました。 その事業計画は、いずれ上場して世界に羽ばたくという大きなスケールのスタートアップではなく、スモールビジネスとして黒字化できるものを表現しました。シェファー・ツェング教授からの教えも、まずはしっかりと黒字化することを重視せよというものでした。 私も、会社経営を辛く厳しい気分でやりたくなかったので、そのためには赤字ではなく黒字にする必要がありました。だからこそ、初年度から黒字化できる戦略を事業計画に落とし込んだのです。 慶應義塾大学の内規では、教授は企業の社長にはなれません。そこで私の秘書をしてくれていたスタッフに社長を任せました。 この、坪田ラボの前身となるドライアイの会社は、少額ながらも黒字化しました。目的は、小さい規模でも起業して事業をひと回りさせ、黒字を出していったん成功させることです。 イメージとすれば、小さな雪だるまを転がしながら大きくしていくようなものです。小規模であれば、雪だるまが壊れてもそれほど大きなダメージは受けません。すぐにつくり直すこともできます。
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