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2気づけば医師の周りは「海外製」だらけ まずは、冒頭で触れた現在の日本の医療の問題点について、さらに詳しく見てみることにしましょう。 その大前提として、現在の日本の医療がみなさん医師をはじめとする医療従事者、その他医療関係者の努力によって支えられていることを、改めて確認しておきたいと思います。 日本では、何らかの病気になったとき、その重篤度によって病院は異なりますが、より良い治療が受けられる体制にあります。世界でいち早く国民皆保険を導入したのは1961年(昭和36年)のこと。基本的にすべての国民が医療を受けられる安心感は、本当に素晴らしいと思います。2020年に始まったコロナ禍でも、日本は死亡率から見ても世界のなかでもっとも良いケアができたと言っていいでしょう。医師として、眼科医としてアメリカの医師免許を取得し、ハーバード大学での臨床を体験した私の目から見ても、日本の医療は優れていると言えます。 一方、健康保険が充実していない海外では、お金がないために腎透析を受けることができず、日本では亡くなることのない患者さんが亡くなってしまう。それが当たり前のこととして受けとめられています。 2007年に公開された、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『シッコ(SiCKO)』という映画をご存じでしょうか。 日本のような国民皆保険制度のないアメリカでは、医療保険の未加入者が夥しい数にのぼり、医療崩壊が起こっています。医療費が払えず、保険会社から保険金を受け取ることができない患者さんは、病院にとって利益になりません。招かれざる客が病気になっても、病院が診療を拒否するケースが実際に起こっています。ムーア監督はその現実に対してドキュメンタリー映画によって警鐘を鳴らしていますが、国民皆保険制度が充実している日本では、そのようなことは基本的に起こりません。

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