ただ、制度として優れていても、問題がないわけではありません。コロナウイルスワクチンの開発で図らずも露呈してしまったように、医療産業としては世界の後塵を拝しているのが現実です。先ほど触れた医薬品・医療機器の輸入超過問題は、それを如実に表しています。 私は2004年に母校である慶應義塾大学医学部の教授になり、それから17年間にわたって臨床、研究、教育に邁進してきましたが、ふと気づくと自分が携わる眼科に関連する医薬品や医療機器などが、ほとんど海外製になってしまっていたのです。お恥ずかしい話ですが、起業するまではまったくそのことを意識してきませんでした。 顕微鏡はドイツ製、白内障の手術装置はアメリカ製です。眼内レンズもほとんどが外国製です。日本のメーカーが販売する点眼液も、オリジナルは海外で開発されたものが多いのが実情です。たとえば私の専門分野のドライアイでは、日本の製薬企業から販売されているある点眼薬も、もともとはアメリカの会社が呼吸器疾患用に開発したものをドライアイに応用し、それを日本に導入したものです。 海外製に凌駕されているのは、眼科だけではありません。外科の内視鏡手術、整形外科の人工関節、心臓外科のペースメーカー、さまざまな生物海外製の医療機器左:眼科63巻p563、右:眼科65巻p466より転載3序章 医薬品・医療機器輸入超過問題の実態
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