製剤など、かなりのものが海外製になってしまいました。この危機的な状況を端的に表しているのが、先ほど挙げた医薬品・医療機器の輸入超過問題なのです(2023年には5兆3,000億円の赤字)。 つまり、日本の医師が優れた医療を提供すればするほど、日本の外貨が流出している。そうしたジレンマに陥ってしまうのです。この問題については、第2章でさらに詳しく論じたいと考えています。 もちろん、優れた医療を提供するのに日本製も海外製もありません。その考え方は少しもおかしくありません。ただ、そう主張する人たちの多くは、より良い医療を患者さんに提供すること「だけ」が医師の最大の使命だと考えているのではないでしょうか。 「患者さんを救いたい」 「他の医師が治せない患者さんを治せるような医師になりたい」 「世界中からその技術を教えてほしいと言われる医師になりたい」 もちろん、若気の至りで「女性にモテたい」というかわいい下心もありましたが、目の前にいる患者さんを治すことが医師の最重要の使命であるという考え方のもと、医療に携わってきました。 しかし、それだけでよかったのかという忸怩たる思いがあります。 自分も含め、日本で医療に携わる医師が懸命に取り組んできたことを否定するつもりは毛頭ありません。その不断かつ熱意ある努力によって、日本の素晴らしい医療体制が確立・維持できたことは紛れもない事実です。4医師は患者さんだけでなく日本の医療も救うべき 言うまでもなく、医師の役割は目の前で病気に苦しんでいる患者さんを助けることです。苦痛を取り除き、元気にしてあげたい。私自身も高校時代に医師の道を志したときに、次のような理想を掲げました。
元のページ ../index.html#4