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文献検索対象期間は2018年3月31日までとした。文献検索には,PubMed,CochraneLibrary,ベタヒスチンの長期投与についてのRCTもある。112例のメニエール病患者の治療前3カ月と投与1年目直前3カ月の月平均発作回数を指標とすると,ベタヒスチン大量(1日量144mg)投与したものは少量(1日量48〜72mg)投与したものにくらべ有意に発作回数を減少させたと述べた5)。しかしながら,221例のメニエール病患者にプラセボを用いた48mg,144mgのRCTでは,投与1年目における月平均めまいの発作回数はいずれもプラセボと比較して差はなかったと述べている6)。ベタヒスチンの1年におよぶ長期投与は無効と思われる。メニエール病に対するジフェニドールの有効性に関するシステマティックレビューはない。二木ら,1972は,メニエール病患者24名に対するプラセボを対照とした各3週間投与とするクロスオーバー試験を行なった。ジフェニドールはプラセボと比べ,めまいの改善と体平衡の改善がみられた7)。ジフェニドールの長期間投与に関する報告はない。付記メニエール病に対する抗めまい薬の有効性に関するJames,etal.,2001とNauta,2014の二つのシステマティックレビューでは,まったく異なった結果を示している。James,etal.,2001らは,多くのRCTでの診断の不正確さについて述べているが,メニエール病の診断は,国,組織,時代によって多少相違があり,必ずしも一定の基準でRCTを行うことは困難であろう。またNauta,2014は,James,etal.,2001らの研究では市販されていない徐放性製剤によるRCTを含めており,疑問を指摘している。アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会および日本めまい平衡医学会では,メニエール病のめまいに対する治療効果の判定は月平均のめまい発作回数で評価することを推奨しており,最近の多くのRCTもそれに従っている。この方法は,定量化が可能で,メニエール病の主要な症状のひとつであるめまい評価に優れている。しかし,メニエール病は前庭症状,蝸牛症状のほかに自律神経症状や精神心理的症状など多彩な症状をもつ。Nauta,2014やArbella,etal.,2003による異なった評価法による検討も必要かもしれない。なお,海外で市販されているベタヒスチンはベタヒスチン塩酸塩(分子量209.12)であるが,本邦で市販されているものはベタヒスチンメシル酸塩(分子量328.41)である。ベタヒスチン塩酸塩16mgはベタヒスチンメシル酸塩24mgに相当する。海外のRCTで用いられている1日量ベタヒスチン塩酸塩16〜48mgは,ベタヒスチンメシル酸塩に換算すると24〜72mgとなる。しかし,本邦におけるベタヒスチンメシル酸塩用量は18〜36mgと低用量である。本邦における用量の見直しが必要となる可能性がある。また,本邦のベタヒスチンメシル酸塩は1日量36mgで使用すべきであり,1日量18mgでは効果が低い可能性がある。文献の採用方法4926.メニエール病の治療のClinicalQuestion

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