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環障害:vertebrobasilarinsufficiency)などでも回転性のめまいを生じうる。前庭神経炎では,第Ⅷ脳神経以外の脳神経症状を認めないのに対して,これらの疾患では,顔面や手足の麻痺やしびれ,呂律不良,頭痛,意識消失など,第Ⅷ脳神経以外の症状が随伴することが鑑別点となる。確定診断は,CTやMRIなどの画像検査で,脳幹や小脳の梗塞や出血を認めることによってなされるが,VBIでは画像検査で異常を認めない。前庭神経炎は,誘因なく発症する回転性めまいを初発症状とし,強い悪心や嘔吐を伴う例が多く,難聴や耳鳴などの聴覚症状を認めない。めまいの発現の7〜10日前に上気道感染症,あるいは感冒に罹患していることがある。前駆症状として上気道炎が認められた割合は60%1),48%2),17%3)と報告により差がある。原則としてめまい発作の回数は1回である。しかし,複数回のめまい発作を呈する前庭神経炎症例の報告もある1,4)。通常めまいは1〜数日間続く。その後次第に回復するが,歩行時の不安定性や動作時の浮動感が長期間持続することが多い。Sekitani,etal.,1993は600例の多施設検討で,発症後7〜14日で回転性めまいは80%に,歩行不安定を60%に認めたが,発症後1〜3ヵ月でそれぞれ4%,17%に減少したと報告している5)。Silvoniemi,1988は81例の検討で,日常生活に支障をきたすめまいは発症2週後で27%程度に,1ヵ月後で3〜4%に減少し,88%の例は発症4週後には以前の仕事に復帰しているが,3ヵ月後でも21%の患者は何らかのめまいを自覚していると報告している6)。28参考文献1)池上彰博,甲田嘉彦,藤野明人:前庭神経炎の臨床的検討自験例38症例を中心として.耳鼻臨床79:547-556,1986.2)関谷透:前庭神経炎の臨床.耳鼻臨床81:637-647,1988.3)水野正浩,加藤晴弘,島貫朋子,三島陽人,吉岡克己,伊藤彰紀:前庭神経炎の臨床像と経過.EquilibriumRes67:141-145,2008.4)喜多村健,三好俊二:多発性めまい発作を主徴とする前庭神経炎.耳鼻臨床79:1233-1239,1986.5)SekitaniT,ImateY,NoguchiT,InokumaT:Vestibularneuronitis:epidemiologicalsurveybyquestionnaireinJapan.ActaOtolaryngolSuppl503:9-12,1993.6)SilvoniemiP:Vestibularneuronitis.Anotoneurologicalevaluation.ActaOtolaryngolSuppl453:1-72,1988.20.前庭神経炎の症状

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