る4)。非注視下(フレンツェル眼鏡あるいは赤外線ビデオフレンツェル)で観察しやすい。発症初期には方向固定性の水平性あるいは水平回旋混合性眼振を認める。眼振の方向は健側に向かう。自発眼振はめまいが消失した後にも長期間持続することが多く,発症1年後でも50%の症例で残る1)とされる。注視眼振の消失は12日間2)または3ヵ月3)を要する。頭位眼振は発症1〜3ヵ月後に40%で残り4),消失には約6ヵ月を要する2)。自発眼振が健側向きから患側向きに一時的に変化することもある5)。前庭神経炎では,左右の前庭機能の不均衡による下肢の筋緊張の左右差が起こり,足踏み軌跡は患側に偏倚することが多い。代償期では健側へ偏倚することもある。前庭神経炎の発症時には,温度刺激検査で一側の高度反応低下ないし廃絶を示す。Choi,etal.,2007は,発症時には100%の例が半規管麻痺(canalparesis:CP)陽性で,反応が正常となったのは1ヵ月後には15%,3ヵ月後には25%,1年後には35%のみであったと報告している6)。Schmid-Priscoveanu,etal.,2001も,急性期には100%でCPを示すが,発症から2ヵ月以上経過するとCPは64%になったと報告している7)。水野ら,2008は初診時(発症後平均20日),100%の例でCPを認め,発症後平均90日後は,53%でCPが残存したと報告している2)。Sekitani,etal.,1993も発症1〜3ヵ月後にCPを50%に認めたと報告してい胸鎖乳突筋で記録するcVEMP(cervicalVEMP)は球形嚢─下前庭神経の機能を反映し,外眼筋で記録するoVEMP(ocularVEMP)は卵形嚢─上前庭神経の機能を反映すると考えられている。Murofushi,etal.,1996は,前庭神経炎47例の34%で,cVEMPの反応が欠如したと報告している。そして,前庭神経炎症例においては上・下前庭神経が障害されるもの,上前庭神経のみが障害されるもの,下前庭神経のみが障害されるものがあることが示唆されると報告している。またcVEMPの反応欠如例のうち6ヵ月から2年の間に30%で反応の回復を認めたと報告している8)。Lin,etal.,2011は,cVEMPの異常は25%,oVEMPの異常は55%に認めたとしている9)。Nagai,etal.,2014は,cVEMPの異常は27%,oVEMPの異常は68%であったと報告している10)。2921.前庭神経炎の検査21.1眼振検査21.2足踏み検査21.3温度刺激検査21.4前庭誘発筋電位(vestibularevokedmyogenicpotential:VEMP)21.前庭神経炎の検査
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