Amini,etal.,2015はさまざまな原因による末梢性めまい(急性期および慢性期の両者が含まれる)に対するベタヒスチンを含む抗めまい薬の有効性を,1970〜2015年の13のプラセボ投与を対照としたRCTについて,症状の改善を主なエンドポイントとして,メタアナリシスを行った。13研究のうち,使用された抗ヒスタミン薬の種類は,ベタヒスチン8研究,シンナリジン1研究,アステミゾール1研究,フルナリジン(世界発売中止)3研究であった。抗めまい薬投与群はプラセボ投与群に対し,OR=5.370(95%CI=3.263-8.839)であり,さまざまなカテゴリーの抗めまい薬は,末梢性めまいのコントロールにおいてプラセボと比較して有効であるエビデンスが示された4)。前庭神経炎急性期患者に対象を限定した抗めまい薬のRCTとしては,Scholts,etal.,2012は,前庭神経炎患者62名をRCTとして,シンナリジン20mgとジメンヒドリナート40mgの併用1日3回投与群とベタヒスチン12mg1日3回投与群に振り分け,症状,日常生活動作,身体動揺,眼振を検討している。症状・日常生活動作において,併用群はベタヒスチン群と比較して,有意に大きな改善を得た。平衡機能においては,併用群はベタヒスチン群において有意な差を認めなかった5)。ただしシンナリジンは本邦では発売中止となった。急性めまいの治療のRCTについて,Marill,etal.,2000は,救急外来を受診した急性末梢性めまい患者を抗ヒスタミン薬であるジメンヒドリナート50mg静注投与群とロラゼパム2mg静注投与群に無作為に振り分け,投与2時間後のめまい感覚(自力で歩行して,自宅に歩いて帰れる程度までのめまい感覚の改善)について検討している。めまい感覚の改善については,ジメンヒドリナートの方がロラゼパムより有意に改善した。また鎮静効果についてはロラゼパムよりも少なく,ジメンヒドリナートは救急外来を受診する急性末梢性めまい患者にとって有用な薬物であると報告している6)。Irving,etal.,2002は,急性末梢性めまい患者に対してジメンヒドリナート50mg筋注投与群とドロペリドール2.5mg筋注投与群にRCTで振り分け,投与30分後で両群ともに追加治療なく帰宅できる患者数に有意な差はなかったと報告している7)。付記急性期の前庭神経炎に対象を限定した,抗めまい薬の有効性に関するメタアナリシス文献は渉猟できなかった。前庭神経炎は超急性期に診断確定が困難で,いわゆる「急性めまい」としての対応となるため,前庭神経炎の超急性期に限定した抗めまい薬のRCTが乏しいと考えられる。急性めまいや末梢性めまいにおける抗めまい薬の有効性に関するエビデンスについては,対象に前庭神経炎以外のめまい,慢性期のめまいが含まれる。なお,海外で市販されているベタヒスチンはベタヒスチン塩酸塩(分子量209.12)であるが,本邦で市販されているものはベタヒスチンメシル酸塩(分子量328.41)である。ベタヒスチン塩酸塩16mgはベタヒスチンメシル酸塩24mgに相当する。海外のRCTで用いられているベタヒスチン塩酸塩1日量16〜48mgは,ベタヒスチンメシル酸塩に換算すると24〜72mgとなる。しかし,本邦におけるベタヒスチンメシル酸塩用量は18〜36mg3723.前庭神経炎の治療のClinicalQuestion
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