鼻アレルギー診療ガイドライン 鼻アレルギー診療ガイドライン ―通年性鼻炎と花粉症――通年性鼻炎と花粉症―【エビデンスの要約】 オマリズマブ(ゾレア®)はIgEのマスト細胞結合部位Cε3に対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であり,花粉症に対する単剤での効果は,欧米と日本でのエビデンスで証明されている。スギ花粉症に対する無作為二重盲検プラセボ対照試験では,血清総IgEと体重に基づいて,オマリズマブおよびプラセボを投与され,鼻症状投薬スコア,眼症状投薬スコアは,プラセボ群よりもオマリズマブ群で有意に低く(p<0.01),その効果と安全性が示された1)。 症状コントロール不十分の成人/思春期の重症スギ花粉症患者337例を対象とした抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬に対するオマリズマブの併用効果を観察した無作為二重盲検プラセボ対照試験が行われ,実薬群でくしゃみ,鼻汁,鼻閉,流涙,眼のかゆみ,鼻の症状スコア(−1.03,p<0.001),眼の症状スコア(−0.87,p<0.001),生活の質 (QOL)においてプラセボ群に比べ有意に改善している2)。 スギ花粉症では労働生産性と労働活動障害の可能性が指摘されている。オマリズマブ使用の臨床試験での労働生産性および活動障害のアンケートの結果より,重症以上のスギ花粉症患者の労働生産性の損失をほぼ1/3に減少させ,労働活動に関して実質的な利益をもたらす可能性があることが判明した3)。なお,参考文献2)には企業社員が共著者に入っており引用されるべきではないが,エビデンスレベルが高く信頼性があるため参考文献とした。参考文献1) Okubo K, et al.:Omalizumab is effective and safe in the treatment of Japanese cedar pollen-78induced seasonal allergic rhinitis. Allergol Int 2006;55:379-386.2) Okubo K, et al.:Add-on omalizumab for inadequently controlled severe pollinosis despite standard-of-care:a randomised study. J Allergy Clin Immunol Pract 2020;8:3130-3140.3) Müller M, et al.:The impact of omalizumab on paid and unpaid work productivity among severe Japanese cedar pollinosis (JCP) patients. J Med Econ 2022;25:220-229.Clinical Question 1重症季節性アレルギー性鼻炎の症状改善に抗IgE抗体製剤は有効か。Answer(推奨) オマリズマブ(抗IgE抗体)は,抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の併用でも症状の残る患者に対して,くしゃみ,鼻汁,鼻閉,流涙,眼のかゆみ,鼻の症状,眼の症状スコア,生活の質を改善する。最適使用推進ガイドラインを満たす場合,抗IgE抗体製剤の投与を強く推奨する。[投票合意率 100%(13/13)]推奨の強さ:強いエビデンスの確実性:A
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