CQCQ7 7 メニエール病に中耳加圧治療を行うことは有効か?推奨中耳加圧治療は,難治性メニエール病のめまい症状の改善に効果が得られる根拠のレベルが十分でないことを理解したうえで,めまい症状の改善目的に行うことを強く推奨する。【推奨の強さ1,エビデンスレベルB】中耳加圧治療は,難治性メニエール病の難聴や耳鳴症状の改善に対する効果が得られない根拠のレベルが十分でないことを理解したうえで,難聴・耳鳴症状の改善目的に行わないことを強く推奨する。【推奨の強さ1,エビデンスレベルB】●背景・目的中耳加圧治療は,1970年代にスウェーデンで開発されたメニエール病に対する治療法である 1)。当初はメニエール病患者を減圧室に入れることでめまい・蝸牛症状の改善が報告され 1),その後,鼓膜換気チューブ留置術を施行したうえで外耳道への陽圧負荷を反復する携帯型中耳加圧装置Meniett ®が開発され,海外では使用されている 2)。しかし,日本ではMeniett ®は未承認医療機器であり,保険診療の下で使用ができなかった。そこで,耳管狭窄症の治療機器として保険収載されていた鼓膜マッサージ器をもとに,日本独自の中耳加圧装置EFET01 ®が開発された 3)。Meniett ®と異なり鼓膜換気チューブ留置が不要であり,外耳道に陽圧と陰圧を交互に負荷する。2017年11月に薬事承認を受け,2018年9月に準用点数化により保険収載され,2020年4月に在宅指導管理料として正式に保険収載(C120,在宅中耳加圧療法指導管理料1800点)された。日本において,保険診療下に使用できる中耳加圧装置はEFET01 ®のみである。中耳加圧装置の適正使用指針(p.52,日本めまい平衡医学会ホームページに掲載http://www.memai.jp/)に沿って使用した場合に限り算定できる。対象患者は,保存的治療に抵抗してめまい発作を繰り返す総合的重症度がStage 4(進行し,外科的治療が考慮される時期)のメニエール病確実例(確定診断例を含む)および遅発性内リンパ水腫確実例であって,外耳道損傷,耳垢塞栓および鼓膜穿孔がない患者である。耳鼻咽喉科専門医が実施する。中耳加圧治療機器を患者に貸し出し,1回3分間,1日2回在宅で使用させる。治療期間は原則1年間。3年間まで治療を継続できる。中耳加圧治療は,メニエール病間歇期における保存的治療と手術的治療の中間に位置する非侵襲的治療である。●解説・エビデンスメニエール病に対するMeniett ®を用いた中耳加圧治療の有効性について,Ahsan, et al., 2015は,2つの無作為化比較試験と10の観察研究の313例を対象にしたメタアナリシスにより,88 第7章 クリニカルクエスチョンClinical Question(CQ)
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