aabb肘頸部正中線腋窩(上腕骨の内側上顆)鼠径部膝窩部腋窩静脈肩甲下動脈肋間上腕神経大胸筋上腕リンパ節中心腋窩リンパ節広背筋胸背神経肩甲下リンパ節前鋸筋長胸神経小胸筋鎖骨下リンパ節最上胸動脈 胸肩峰動脈(胸筋枝)大胸筋胸筋下リンパ節胸筋間リンパ節外側胸動脈胸筋リンパ節小胸筋図10 領域リンパ節の分布と腋窩リンパ節(a) 領域リンパ節の部位と躯幹における区画の境界(日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版p9,図1a,金原出版,東京,2010より転載)(b)腋窩リンパ節(日本癌治療学会編:日本癌治療学会リンパ節規約,金原出版,東京,2002より転載)5.手術療法:センチネルリンパ節生検(SLNB)・リンパ節郭清術 41するlevelⅠ領域に存在するとされる122)(図10b)。腫瘍が橈側にあれば橈側皮静脈,尺側にあれば尺側皮静脈に沿ったリンパ流となることが多く,中央にあれば両者に沿うことがある。また,手の尺側背側や小指背側の原発巣では,肘リンパ節にSLNを認めたり122),上腕中央の筋間中隔にはmid-arm nodeといったinterval nodeも存在することがある123)。さらに,上腕部や肩甲骨部の病変では,鎖骨下リンパといった頸部リンパ節にもドレナージを認める場合も報告されており124),術前にはRI法によるリンパシンチグラフィーによる精査を行っておくことが望ましい。4)下肢下肢の領域リンパ節は,鼠径リンパ節から骨盤内リンパ節までとなるが,SLNの多くはsapheno-femoral junctionの周囲かその内側に存在し,junctionよりも末梢側かつ大腿動脈外側にはリンパ流やリンパ節転移はほとんどないとされる125)。ただし,P(Popliteal)領域と呼ばれる踵荷重部中枢側1/2からアキレス腱部を含めた下腿屈側末梢の2/3付近や足底外側に原発巣が存在する場合には,膝窩リンパ節を経由して鼠径リンパ節へと続くリンパ流が存在する(serial drainage),あるいは鼠径リンパ節と2系統のリンパ流が併存(parallel drainage)することもある。このような場合SLNが膝窩リンパ節にも検出されることがあるため注意を要する126) 127)。下腿原発のメラノーマで膝窩リンパ節に転移を生じる確率は1〜2%と稀であるものの127) 128),その存在を見逃さないように膝窩部のリンパシンチグラフィーによる確認は必須と考えられる。(5)SLNBの今後の展望SLNBはメラノーマの予後や治療方針を検討する上で,極めて重要な因子となることは前述の通りである。早期リンパ節郭清術の意義を検証した国際的な多施設共同RCT(MSLT-Ⅱ)の結果が近年報告され61),SLNB陽性患者に対してリンパ節郭清術を早期に施行した群(郭清術群)と超音波によって領域リンパ節の経過を観察した群(経過観察群)の間に疾患特異的生存期間で差を認めず,リンパ浮腫などの有害事象は郭清術群で高率に発生した61)。
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