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日光角化症は慢性的な日光紫外線の曝露によって発生した上皮内癌で,顔面と手背に好発する。日光角化症の治療方法には手術,凍結療法,PDT,5-FU軟膏の外用,イミキモドの外用などの治療がある。これらの治療法の選択については,病巣と患者側の要因に基づいたガイドラインが諸外国から提案されている。ガイドラインごとに多少の差を認めるが,基本的には単発であれば凍結療法や外用療法,多発している場合は凍結療法,外用療法,PDTを,角化が強い病変や他の治療に反応しなかった病巣や真皮内浸潤が疑われる場合などには手術を選択するという方針が一般的である。しかしながらそれ以外にも多くの選択肢が存在し,実臨床においてはどの治療法を用いるべきか迷う場面が多い。今回この問題についてEBMの手法を用いて検討を行った。外科的治療は最も有効な治療法の一つであると考えられる。切除断端が陰性であれば病変消失率は理論上100%となる。しかしながら手術侵襲や瘢痕などの問題もあり,症例を選んで施行する必要があると考えられる。病変消失率としての他の治療との比較データで,エビデンスレベルが高いものが存在しないが,上記を踏まえ,推奨度1Bとした。液体窒素を用いた凍結療法は簡便であり,日光角化症に対する有効な治療法である。凍結療法の有効性についての完全消失率は68〜86%と報告されている123) 132)〜136)。また,局所での副作用の発現率に関しては35〜43%と報告されており,主な副作用としては痛み,瘢痕,色素脱失などが挙げられる123) 134)〜136)。報告数も多く,多くの症例に用いられていることからも推奨度1Bとした。PDTは広範囲に存在する多発性の日光角化症に対して有効な治療法である。PDTの有効性については,局所での病変消失率が68〜93%と報告されている。局所での副作用発現率としては26〜100%とやや高いと報告があるが,このなかには局所の紅斑など,軽微なものも含まれる123) 134) 135) 137)。2019年3月の段階で本邦では保険適用外であるが,海外では一般的な治療として認識されており,また報告数も多く,総合的な統計学的な差はみられないが,それぞれの報告での効果が他と比較して高いと考えられることから推奨度1Bとした。イミキモドはPDTと同様広範囲に存在する多発性の病変に対して使用される。病変消失率は55〜85%と報告がある。局所での副作用発現率は85〜92%とやや高いが,PDTと同様に局所での紅斑などの軽微なものも含まれている137) 138)。本邦でも2011年に保険適用となり,それ以来多くの症例に用いられており,報告も増えてきていることから推奨度1Bとした。5-FU軟膏は広範囲に存在する多発性の病変に対して使用される。病変消失率は26〜96%,局所での副作用発現率は25〜77%とややばらつきがある123) 132) 133) 138) 139)。しかしながら海外でも多く使用され,報告も多いことから推奨度1Bとした。それぞれの治療法について文献検索を行い,文献内容からの絞り込みを行った結果,11編のRCTに基づく報告が得られた。しかしながらそれぞれの対象が異なり,治療の効果自体を単純比較できるものではなく,病変の完全消失率,副作用の発現率を主なアウトカムとして取り上げた。推奨文には触れていない治療法として炭酸ガスレーザー,ジクロフェナク,ニコチン酸内服療法などが報告されている。病変の局所消失率は炭酸ガスレーザーで72〜78%,ジクロフェナクでは50%,ニコチン酸内服では消失率の報告はない136) 139)〜141)。ジクロフェナク,ニコチン酸は本邦138 第3章 有棘細胞癌診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨▪背景・目的▪科学的根拠▪解説

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