れて衛星病変を認めることも多い。わが国での報告では欧米からの報告と比べて初診時に既に大型の病変を形成していることが多いが14) 31) 32),その要因は明らかでない。多くの研究から5 cmを超える病変では予後が悪くなることが示されており31) 33),受診時に大型の病変を形成していることが,わが国の血管肉腫患者の予後が欧米と比べて悪い要因の一つとして推察されている34)。また発症後比較的早期からリンパ行性および血行性に転移を来すが,血行性転移では肺,肝,骨などの頻度が高い。特に肺転移は頻度が高いのと同時に,血胸・血気胸などを生じやすいため直接死因となることが多い。Stewart-Treves症候群,慢性リンパ浮腫に続発する血管肉腫では,既存のリンパ浮腫を伴う上肢または下肢に易出血性の結節や浸潤を触れる紫斑が混在してみられる(図1e)。比較的初期から,浮腫を認める肢に病変が広く散在していることが多く,頭頸部血管肉腫よりもさらに病変部位の特定が困難である。2.2 病理組織血管肉腫は進行が早く予後も非常に悪いことから,臨床的に血管肉腫が疑われたら可及的早期に生検し,病理組織学的な診断を確定する必要がある。生検を含む外科処置により局所の病勢を悪化させる可能性があるとの意見もあるが,生検後速やかに治療を開始することを前提に,生検を行うことが必須である1)。血管肉腫の組織像は発症部位による違いはなく,不規則に拡張・吻合する血管腔の増加と異型・多型な内皮細胞の増殖により特徴づけられる。ただ分化や異型性の程度はさまざまで,同一患者においても病変部位によって異なる所見を呈することも多い。高分化な部では一層の血管内皮で裏打ちされる拡張した脈管増生が主体で,膠原線維間での裂隙様の脈管増生,核が濃染し内腔に突出する内皮細胞,核分裂像,赤血球の血管外漏出などが手がかりとなる(図2)。異型性に乏しい場合には反応性の血管拡張/増生や血管腫と鑑別が困難な場合があり,その際には臨床所見と合わせた総合的な診断も必要となる。特に病巣辺縁部分では,組織学的にも境界を同定しにくいことが多い。病理組織像で真皮浅層の拡張した不整な脈管構造のみで腫瘍性の増殖はみられないが,内皮細胞の核がやや大型で内腔に突出,または膨化した細胞自体が内腔に岬状に突出するようなpromontory signのような像を呈することがある(図3a)。このような高分化な腫瘍細胞は,血管内皮細胞マーカーであるCD31またはCD34とリンパ管内皮細胞マーカーであるD2-40で共染されるので正常な血管またはリンパ管と区別できる(図3b〜d)。なお,リンパ管もCD31陽性となるが,その発現は血管内皮より弱く繊細なため,強い陽性であれば血管と判別可能であり35),加えて周囲に赤血球の血管外漏出があればその脈管は腫瘍性と捉えられる。一方,低分化な部では大型で多型性に富む腫瘍細胞が結節状〜びまん性に増殖して管腔形成にも乏しいことが多く,他の間葉系腫瘍,造血器腫瘍や未分化転移性腫瘍との鑑別を要する(図4)。免疫染色では,CD31,CD34,FLI-1,ERGなどの血管内皮マーカーが診断上有用である28)。また,リンパ管内皮マーカーであるD2-40,Prox-1 やVEGFR-3 も陽性となることが知られている36)。特にCD31は感受性,特異性とも高く有用であるが,染色性は個々の症例でばらつきがあるため複数のマーカーで検討することが望ましい。CD34は陰性または部分陽性となることが多く,D2-40は頭部血管肉腫ではほとんど陽性となる37)。血管肉腫が疑われる場合には,一般施設でも施行可能なVimentin, Pan-keratin,S-100, CD31,CD34,D2-40等でスクリーニングするとよい。なお,放射線治療後およびリンパ浮腫関連の二次性血管肉腫ではMYCが陽性となることが知られており,放射線照射後の異型血管病変(atypical vascular lesion)との鑑別上有用である38)。なお,血管肉腫の2.皮膚血管肉腫の診断 233
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