た複数の研究においても二次発がんの報告はない170) 174) 286) 287)。よって,従来線量と同等の効果が期待できるのであれば,再発時の再照射が可能であり,有害事象の少ない低線量電子線照射は皮疹の程度により検討すべきと考える。ただし比較検討できた論文は全身電子線照射であり,本邦で施行できる施設は現状ほぼ存在しないと考えられ,実際には局所電子線照射を複数箇所行うことになる。また,腫瘤など厚みのある部位に関しては電子線ではなく,より深部まで到達する放射線照射が望ましいと考える。低線量と従来線量を比較検討したRCTはなく,後ろ向きコホートが2件のみであった。また,1件は古い年代の症例も含んでおり,バイアスリスクが大きいと考えられた。よって確実性は「とても弱い」とした。2)利益と害のバランスはどうか?現状として多数の部位を照射する局所電子線照射が多く行われており,効果が同程度と考えられるならば低線量の方が再発時に複数回照射できるため,益が多い可能性がある。また,副作用も従来線量よりも少ないと期待されるため,益が上回ると考えられた。しかし限られた局所部位であれば,より長い奏効期間を優先して従来線量を選択するケースもあると考えられる。3)患者の価値観や希望はどうか?入院や通院期間が短縮されるため,有用性が同程度であれば受け入れを支持するケースが多いと考えられる。4)正味の利益とコストや資源のバランスはどうか?保険診療で行える治療であり,同程度の効果が期待できるのであれば,介入によって通院や入院期間が1〜2週間短縮して医療費を節約できる。放射線療法のできる施設は多いため,不公平性も減少すると考えられる。5)推奨のグレーディングパネル会議においてはエビデンスがとても弱いものの,局所再発しやすい症例に対して繰り返しの再照射や副作用減少の利益が得られるため全員一致で「弱い推奨」となった。ただし,検討された比較論文は局所ではなく全身電子線照射であることから,そのままの奏効率や全生存期間が実際の局所照射に対応しているわけではないことに留意すべきであるという意見があった。また,電子線は皮膚の浅い部分にエネルギーが集中するため,巨大腫瘤などの厚みのあるケースでは電子線ではなく,X線による放射線療法が適応になるであろうことも確認された。EORTCガイドラインでは早期菌状息肉症の段階から全身性電子線が記載されている。局所放射線は進行期のfirst-lineとして記載されているものの,低線量か従来線量かの区分けはされていない。放射線療法は抗がん剤治療では部分的に奏効しない病変に対して高い治療効果が望める。低線量が従来線量に劣らないデータがあれば,再発時に複数回施行できるため臨床での有用性は高い。また低線量では従来線量と比較すると有害事象も少ない。よって低線量と従来線量の比較についてCQ 3 331▪パネル会議1)アウトカム全般に関するエビデンスの質(確実性)はどうか?▪関連する他の診療ガイドラインの記載▪今後の研究の可能性
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