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は,前向きコホートによる臨床研究が望まれる。また,抗がん剤治療との併用による効果も検討されるべきであろう。本邦においては全身電子線療法を実際に行うのは設備の点で困難な施設が多く,代用されうる全身放射線療法の開発も望まれる。病期ⅡB以上の進行期菌状息肉症では,薬物療法の効果は一時的で治癒が期待できない。治療選択肢が限られるため,生命予後も良好とはいえない。同種移植は,菌状息肉症に対して長期寛解をもたらす可能性がある治療である。最近は,菌状息肉症において強度減弱前処置による同種移植の有用性が示され,従来の骨髄破壊的前処置による同種移植よりも対象年齢が上がってきた。しかし,同種移植ではGVHD,前処置関連毒性,感染症などに起因する治療関連死亡のリスクがあり,同種移植後の再発の可能性もある。同種移植が移植以外の薬物療法と比較して,生存期間,無病生存期間,治療関連死亡,再発率などの点でより優れているかを明らかにすることは,治療選択上有益である。症例数40を超える菌状息肉症・セザリー症候群における同種造血幹細胞移植の症例集積研究が3件あったが,非移植治療と比較を行った文献はなかった。3件のうち,2件で不十分な交絡の調整を行っておらず,評価のタイミングも文献によって異なり,バイアスリスクは高い。いずれのアウトカムにおいても,同種造血幹細胞移植と非移植治療の直接的な比較はできなかった。全生存率に関しては,3件の同種造血幹細胞移植に関する症例集積研究で,Duarteらは3年生存率53.3%(1年生存率66%)177),Lechowiczらは5年生存率32%(1年生存率54%,3年生存率38%)179),Hosingらは4年生存率51.1%288)と報告している。これらの全生存率は同種造血幹細胞移植単独の成績ではなく,再発時に何らかの追加治療が施されている結果と想定される。よって,この成績を非移植治療のシングルアームの前向き試験の結果とは比較できない。2016年にScarisbrickらによって報告された病期ⅡB以上の菌状息肉症・セザリー症候群1,275例の後ろ向きの予後解析では,5年生存率51.9%(病期ⅣA2で32.9%,病期ⅣBで39%),1年生存率88.1%(病期ⅣA2で81.0%,病期ⅣBで78.5%)である27)。それぞれの疾患の重症度が異なることが想定されるため,直接比較はできないが,全生存率の視点からは,病期ⅡB以上の進行期の菌状息肉症・セザリー症候群に対して,同種造血幹細胞移植が非移植治療より推奨される可能性は    介入しないことを弱く推奨する:1/9332 第4章 皮膚リンパ腫診療ガイドライン クリニカルクエスチョン(CQ)と推奨推奨:進行期菌状息肉症に対する治療として,適応を慎重に検討した上で,同種造血幹細胞移植を治療の一選択肢として提案する。パネル会議での投票結果:1回目 介入することを弱く推奨する:8/9   (投票者数:9名) 推奨度2D行うことを弱く推奨,エビデンスの確実性:とても弱い▪背景,この問題の優先度▪解説(エビデンスの要約)CQ 4進行期菌状息肉症に対する治療として,同種造血幹細胞移植は非移植治療(主に薬物療法)と比較して推奨できるか?

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