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また,SLNBの予後への関与については,TTが1.2〜3.5 mmの群において,10年疾患特異的生存率がSLNB 群で71.3%,経過観察後の郭清術群で64.7%と差を認めたが,TTが3.5 mm以上の症例や領域リンパ節転移のなかった症例では両群間に差を認めなかった105)。つまり,TTが4 mm超と厚いものについては,既に潜在的な領域リンパ節転移や遠隔転移を有している可能性が高く,SLNBは中間層の厚さで有用と考えられる。そこで,NCCNガイドライン(Version 2. 2019[2019年3月時])34)や米国臨床腫瘍学会のガイドラインでは107),T1a病変(TT<0.8 mm,潰瘍なし)にはSLNへの転移率が5%以下としてSLNBを推奨しておらず,T2a病変や病期Ⅱ(TT>1 mm, any feature, N0)で話し合いのなかで提案する(discuss and offer)としている。また,T1b病変(TT<0.8 mm,潰瘍あり,TT:0.8〜1.0 mm)では話し合いのなかで考慮する(discuss and consider)となっている。(3)SLNBの手法SLNの同定法には,色素法,radioisotope(RI)法,indocyanine green (ICG)蛍光法が挙げられる108) 109)。色素法ではパテントブルーやインジゴカルミンといった色素トレーサーを腫瘍近傍に皮内注射して,青染したリンパ管やリンパ節を同定する。簡便な手法ではあるが,色素法単独でのSLN同定率は80%程度にとどまるため,単独での使用は避け他の手法との組み合わせ,または補助として使用する。多くはRI法との併用が行われ,それにより同定率は95%以上とされる108)。RI法は,スズコロイドやフチン酸といったRIトレーサーを使用してSLNを同定する手法で1993年にAlexらにより最初に報告された110)。まず,リンパシンチグラフィーでRIが高濃度に集積するhot nodeを確認し,SLN位置の全体像を評価する(図7a)。術前にガンマプローブでSLNの位置を確認の上(図7b),切開線をデザインする。ガンマプローブを術野で使用して,放射性活性を測定しながらピンポイントにSLNを同定し,低侵襲にSLNの摘出を行う(図7c)。最も頻用される同定法で,一般的に放射性活性がバックグラウンドの2倍以上で,かつ放射性活性が最高のhot nodeの10%までのリンパ節をSLNとする111)。ICG蛍光法は,ICGが血中のアルブミンと結合して生じる近赤外線領域の蛍光を医療用Charge Coupled Device(CCD)カメラで捉えることで皮下1〜2 cmの深さにあるリンパ流やリンパ節をリアルタイムで観察する手法である(図8a)109)。原発巣と領域リンパ節が近い場合,RI法ではshine through現象を生じてSLNの同定が難しく,特に頭頸部や陰部周囲の病変で問題となる。その際に有用となるのがこのICG蛍光法で(図8b, c),表在性のリンパ節に限定されるものの,RI法との併用でさらなる同定率の向上が報告され112),特に頭頸部における有用性は高い113) 114)。RI法で検出したhot nodeとは異なるリンパ節をSLNとして同定し,より多くのSLNを検出する傾向にあるとされるが,ICGの分子量が小さくリンパ移行性が高く早いために,SLNを通過した2nd echelon nodeを検出している可能性がある109)。そのため,注射後早期から経時的にリンパ流を観察する必要があり,腋窩部や肥満症例などでは,ICG蛍光法による表在からのリンパ流観察が困難な場合もある115)。より深部のSLNを同定する手法として,SPECT(single photon emission CT)/CTが挙げられる118)。SPECT/CTはRIに対するSPECT断層撮影にCTによる解剖学的画像を融合した検査で,ガンマプローブや赤外線カメラでは同定が難しい深部のSLNを画像的に同定することが可能である。特に,皮下脂肪の厚い肥満症例や頭頸部のSLNの同定率向上に有用とされる117) 118)。38 第2章 悪性黒色腫(メラノーマ)総論

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