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骨関節8推 奨     全身性強皮症(SSc)特有の病態が骨代謝に及ぼす影響は詳細には明らかにされていない解説が,SScの膠原病としての慢性炎症,皮膚硬化・関節病変による活動性の低下,消化管病変による吸収不良(ビタミンDなど)・低栄養状態,早期閉経,グルココルチコイド(GC)使用などは一般的に骨量減少・骨粗鬆症(OP)のリスクであり,SScではOP・骨折リスク増加が予測される1)。実際,標準的な骨密度(BMD)評価法であるDXA法で測定されたSSc患者の骨量状態は,健常人に比較し低下していることが明らかにされている2)。18件の報告(1996年1月〜2018年12月)のメタ解析において,pooled weighted mean difference(WMD: 各骨密度をg/cm2で表示,その差を加重)で評価すると,SScは対照に比べ有意にWMDがいずれの部位(全身,腰椎,大腿骨頸部,股,転子部)でも低く,腰椎BMDはWMD −0.08 ,大腿骨頸部は−0.28,股は−0.08,転子部−0.06,全身−0.06であった。また,2012年までのSScにおける骨量評価の報告を対象にしたシステマティックレビューでは,DXA法でのTスコア −1.1から−2.5を骨量減少,−2.5未満を骨粗鬆症と定義した場合,骨量減少は27〜53.3%,骨粗鬆症は3〜51.1%,2件を除き10件でSScにおける低骨密度を報告している3-10)。ただし,有病率や後述するリスク因子のばらつきに関しては,Yuenらの報告を除いてSScのサンプル数が100例以下と小さく,SScの病型・罹患臓器などが一定していないこと,閉経の有無などが要因として指摘されている。その後,タイからSSc 205例を対象にした骨粗鬆症有病率が報告されたが,腰椎では28.3%(女性26.3%,男性10%),大腿骨頸部では8.8%(女性 11%,男性 2.1%)と報告された11)。SScにおいて骨量減少・骨粗鬆症の頻度が高いことから,脊椎骨折などの骨粗鬆性骨折の発生が増加していることが予測され,実際,台湾の健康保険データベースを使ったSScコホート研究において骨折リスクの増加が確認されている。SSc 1,722例(女性 77.8%,平均年齢 50.3歳)において,平均観察期間 5.2年でみると骨折の罹患率(/1,000患者年)は腰椎 6.99,股 2.18,対照比較での罹患率比(IRR)は全体で1.69倍,腰椎 1.78倍,股 1.89倍であった。ただし,性別で評価すると女性 1.74倍,男性 1.06倍と女性で有意であった12)。一方,システマティックレビューでは,骨折はSScで0〜38%3),メタ解析では脊椎以外の骨折のORが2.24,脊椎骨折のORが10.38,とさらに高く報告され2),いずれにしてもSScにおける骨折リスクが増加していると考えられる。SSc患者の診療においては骨密度評価を行うことを考慮する。特に女性(閉経の有無に関わらず),びまん皮膚硬化型,ステロイド使用例では骨量減少のリスクが高く,定期的に骨密度評価を行うことを推奨する。推奨度:1 エビデンスレベル:A[合意度8.8] 171 171CQ1SSc患者に骨密度評価は有用か?

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