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CQ
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腎外傷の損傷分類にはどのようなものが
あるか?その
有用性や問題点
は?
推奨グレード
B
腎外傷の損傷分類として,わが国ではJAST分類が主に用いられ,一方,欧米で
はAAST分類が主に使用されている。両者ともに,治療成績と相関することが
示されており,治療方針の決定の際にも一定の有用性と妥当性が評価されてい
る。JAST分類は2008年に改訂されたので,その有用性に関してはさらなる検
証が必要である。
解 説
腎外傷の損傷分類として,わが国では日本外傷学会の腎損傷分類(JAST分
類)が主に用いられている(表1)。一方欧米では,米国外傷外科学会の分類
(AAST分類)
1)
が主に使用されている(表2)。小児においては確立した分類法
はなく,一般に上記の分類法が用いられているのが現状である
2)
。
1997年に作成されたJAST分類(JAST分類1997)は,損傷形態により重症度
をⅠ~Ⅳ型に分け,さらに血腫と尿漏の広がりを付記した点が特徴である
3,4)
。
JAST分類1997の妥当性を評価した前向き研究は認めず,後向き研究のみを認め
る。篠島らは腎外傷患者115人を対象とした後向き研究で,腎摘除の有無を評価
項目とした際の,実質損傷の重症度,血腫ならびに尿漏の相関性を検討した結
果,実質損傷の重症度のみが独立した予後予測因子であったと報告している
5)
。
その他の報告でもJAST分類1997は,腎の損傷程度を反映し,治療成績とも相
関するために有用性があるとの意見を認めるが
6,7)
エビデンスの蓄積は十分では
ない。
2008年に改訂されたJAST分類(JAST分類2008)は,腎を含む実質臓器全体
でⅠ~Ⅲの3型分類に統一されており,JAST分類1997でのⅣ型は削除され,腎
茎部血管損傷は,appendixに記載されることになった。JAST分類2008の妥当