1 I.疫学・診断28検索結果の概要 精巣癌と画像検査に関する網羅的文献検索を行ったところPubMedから560論文,Cochrane Libraryから3論文,医中誌から13論文で,合計576論文が抽出された。一次スクリーニングで559論文が除外され,キーワードをもとにハンドサーチした17論文を加えた34論文について二次スクリーニングを行った。二次スクリーニングでは,16論文が除外された後,合計18論文について,本CQの益のアウトカムである“(精巣癌の転移における画像診断の)正診率”と,害のアウトカムである“(画像検査による)被曝”が十分に議論されているか,を主たる基準として検討した。アウトカム1の解説 精巣癌における画像検査による転移診断に関するシステマティックレビューによると,胸部では,CTは感度100%,特異度92.7%,単純X線は感度76%,特異度98%である1)。転移の検索については胸部CTが推奨されるが,1 cm以下の肺病変については偽陽性の場合があることを知っておくべきである2—9)。また,セミノーマにおいて,腫瘍マーカーが陰性かつ腹部に転移を認めない症例では肺転移が存在する可能性は低く,胸部CTを省略できるかもしれない2—9)。腹部では,造影CTは感度66.7%,特異度95.2%とされているが1),短径1 cm以上をリンパ節転移陽性とした場合,感度37%,特異度100%,短径4 mm以上を陽性とした場合,感度93%,特異度58%とも報告されており10),採用するサイズ基準によって偽陽性や偽陰性となりうる5—12)。 腹部MRIは,CT以上の情報が得られないため,造影剤が使用できない患者,放射線被曝を拒否する患者に推奨される1,5—9,13)。 FDG—PET/CT14—16)は,初期病期診断の画像検査法として,ほかの検査法と比べて優位性はなかったとされ,推奨される明確なエビデンスはない1,15,16)。 脳MRIや骨シンチグラフィは,その転移が疑われる場合や症状がある場合,または,非常に大きな転移巣や多臓器に転移を認める場合や,腫瘍マーカーが非常に高値など腫瘍の進行が高度な場合に行う5—9,17,18)。 以上より,アウトカム1のエビデンスの強さはB(中)とした。アウトカム2の解説 精巣癌における画像検査による転移診断に関するシステマティックレビューによると1),精巣癌の病期診断時に生じる医療被曝に関して詳細に検討された報告はなく,有害性は不明と報告されている。 以上より,アウトカム2のエビデンスの強さはD(とても弱い)とした。エビデンス評価
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