45015T
11/19

112  扁平上皮癌の最も一般的な組織学的悪性度評価法として,従来からGrade分類(WHO)がある1)。口唇癌におけるBroders分類2)に由来し,主として腫瘍の分化度を指標とした分類である。大きな母集団における検索では,予後やリンパ節転移とある程度の相関がみられることから,慣習的に使われてきた。その他の代表的な組織学的悪性度評価法にはJakobsson分類3),Willen分類4)やAnneroth分類5)があり,腫瘍宿主境界部の6〜8因子を点数化し,総合点により悪性度を評価する。その有用性は多くの研究により検証されているが,評価法の煩雑さから広く普及するには至っていない。本邦の口腔外科では浸潤様式分類としてYK分類6)を使用する施設が比較的多い。この分類はJakobsson分類,Willen分類における評価項目の中から,腫瘍宿主境界部の胞巣形態に注目したものである。口腔癌特有の高分化癌をYK-1型,スキラス型の間質反応を伴うびまん性浸潤をYK-4D型としたのが本分類の特徴である。YK分類はリンパ節転移と比較的よく相関し,特にYK-4D型に転移が多いと報告されている7)。なお,消化器癌で用いられる浸潤増殖様式(INF)との対応では,INFα(a)はYK-2型に,INFβ(b)はYK-3型に,INFγ(c)はYK-4C型とYK-4D型に相当する8)。なお,2005年のWHO分類(第3版)では,Grade分類は予後との相関が低く,深部境界部でのびまん性浸潤様式が重要であることを指摘している9)。AJCC(第8版)では,WPOIのWPOI-5を推奨される予後評価基準としている10, 11)。表2-1にYK分類,Anneroth分類(POI-1〜4)およびWPOI-5の評価基準を示す。YK分類とAnneroth分類のPOI-1〜4は,生検検体と手術検体のいずれでも評価可能であるが,WPOI-5は生検検体での表2-1 浸潤様式分類YK-1YK分類POI-1POI分類境界が明瞭境界にやや乱れ膨脹性発育境界は不明瞭で,大小の胞巣が浸潤指状あるいは分離した大型胞巣による膨脹性発育15個以上の腫瘍細胞からなる胞巣の浸潤性発育境界は不明瞭で,小さな索状の胞巣が浸潤(索状型)15個以下の腫瘍細胞からなる胞巣の浸潤性発育境界は不明瞭で,胞巣を作らずびまん性に浸潤(びまん型)腫瘍から健常組織が1mm以上介在して離れた胞巣の浸潤性発育YK-2POI-2YK-3YK-4CPOI-3POI-4YK-4DWPOI-5癌の深部浸潤先端部における浸潤様式は,予後判定に有用な病理組織学的所見の1つである。口腔癌の組織学的悪性度評価は予後と相関するとされている。CQ17口腔癌の浸潤様式は予後の判定に有用か?

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る