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口腔癌の病理診断には,検査法として細胞診と組織診がある。口腔内では擦過細胞診が主体である。従来の直接スライドガラス表面に細胞を塗抹する「直接塗抹法」よりも,専用の保存液中に細胞を回収する「液状化検体細胞診法」の方が,細胞の乾燥や消失が少なく,免疫染色の併用も可能であることなどから推奨されている1)。細胞診は初診時のスクリーニングはもとより,治療効果判定や経過観察あるいは集団検診でも利用可能な簡便な検査法である。細胞採取に際しては,含嗽や綿球などで口腔内清掃を行い,粘膜を湿潤させ,ブラシなどを用いて病変のなるべく広範囲を均一な圧力で10回程度擦過し,表層細胞のみの採取にならないように可及的に深層細胞の採取に留意する。出血が多いと細胞が重なり,判定に影響する1)。なお,口腔癌でも深部病巣に対して,穿刺吸引細胞診が行われる場合がある2)。治療を前提とした試験的な組織採取による検査は,隣接する組織を含めて病変の一部分を切除する生検(部分切除生検:incisional biopsy)が一般的である。生検の目的は癌の確定診断であるが,癌の悪性度,周囲組織への進展,脈管・神経侵襲など,予後を左右する因子の判定にも有効である。また,小さな病変の組織診検査としては病変部をすべて切除する切除生検(全切除生検:ex-cisional biopsy)があり,一度で全体像を把握することが可能である。癌の部分切除生検で癌細胞の循環播種が起こる可能性が指摘されており3),小さな病変で可能であれば全切除生検を行う方がよいと考えられている。生検・病理診断の確定から外科的治療の開始までの期間について,これまでの観察研究の結果からは,この期間の延長が口腔癌患者の生存率に影響する可能性が示唆されているものの,どの程度の期間を「延長」とするかの定量的な定義は定まっておらず,一定の見解は得られていない(CQ16:p.110).扁平上皮癌の最も一般的な組織学的悪性度評価法として,従来から組織学的分化度分類(WHO)がある4)。大きな母集団における検索では予後やリンパ節転移とある程度の相関がみられることから,慣習的に使われてきた。その他の代表的な組織学的悪性度評価法にはJakobsson分類5),Willen分類6)やAnneroth分類7)があり,腫瘍宿主境界部の6〜8因子を点数化し,総合点により悪性度を評価する。その有用性は多くの研究により検証されているが,評価法の煩雑さから広く普及するには至っていない。癌の深部浸潤先端部における浸潤様式は,予後判定に有用な病理組織学的所見の1つである8)(CQ17:p.112)。  17 Ⅳ-B 病理診断 1 細胞診 2 生検

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