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4 プライマリ・ヘルス・ケア

第1章 

 健康の概念と公衆衛生学

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 社会復帰の促進

 病気休暇後の職場の適正配置,雇用の促進,精神科デイケア・作業療法など。

 1975年,WHO執行理事会は開発途上国の多くの人びとが保健サービスの恩
恵を受けていないとして,効率よい包括的保健サービスを拡充する必要がある
ことを強調し,すべての国民のために,予防から治療,健康増進,リハビリテー
ションにまで至る包括的保健サービス体系を充実かつ優先させ,地域レベルの

「プライマリ・ヘルス・ケア」に重点をおくべきであるとした。WHOはここで

はじめて,プライマリ・ヘルス・ケア(Primary Health Care;PHC)という言
葉を使用している。
 1977年第30回WHO総会で,事務局長のMahlerは「

2000年までにすべて

の人びとに健康を

(Health for all by the year 2000;HFA 2000)と演説したが,

これは1948年のWHO憲章による「最高の水準の健康を享受することは人類,
宗教,信条,経済,社会的条件にかかわらず,すべての人間にとって,基本的人
権のひとつである」に共通する概念である。その総会で「2000年までに,すべ
ての国のすべての人が,社会的にも経済的にも活動できる生活と健康を保持す
るようにしなければならない」とする決議を採択し,翌1978年,アルマ・アタ
でのプライマリ・ヘルス・ケアに関する国際会議で,この決議をその後20年の
各国政府とWHOの共同目標として宣言したものが,

アルマ・アタ宣言

である。

 アルマ・アタ宣言は,プライマリ・ヘルス・ケアにとって基本的で不可欠の次
の8項を採択し,直ちに各国での計画と実行を促したものと要約できる。
 ①健康問題とそれに対処するための教育
 ②食糧の供給と適切な栄養摂取
 ③安全な水の供給とその衛生対策
 ④家族計画を含む母子保健対策
 ⑤主要感染症の予防接種の実施
 ⑥疾病の予防と地域の特殊な疾病への対策
 ⑦日常的な病気や傷害に対する適切な治療
 ⑧最小限必要とされる薬剤を使っての疾病の治療
 プライマリ・ヘルス・ケアの概念の特徴は,従来の専門家による公衆衛生を拡
大し,住民自身が自ら参加して公衆衛生を実践することを促した点にある。

 プライマリ・ヘルス・ケア

アルマ・アタ宣言

1978年9月6日から12
日まで,旧ソ連のカザフ共
和国アルマ・アタにおいて
プライマリ・ヘルス・ケア
国際会議がWHOとUNI-
CEFとの共催で開催され,
最終日の9月12日「アル
マ・アタ宣言」が採択され
た。

「プライマリ・ヘルス・

ケア国際会議は,1978年
9月12日アルマ・アタに
会し,世界中のすべての人
びとの健康を保持し,増進
するため,すべての政府,
保健・開発従事者,ならび
に全世界の地域住民によ
る迅速な行動が必要であ
ることを指摘し,ここに次
のように宣言する」に始ま
る全文10章から成る宣言
文である。