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Ⅱ日常整容編FQ 33135方法についての規定がされておらず,内分泌療法誘発脱毛に対する再発毛の促進や脱毛予防におけるミノキシジル外用薬の有効性を十分に検証したデータとはいえない。しかし,内分泌療法誘発脱毛は,エストロゲンシグナルの阻害によりジヒドロテストステロンレベルが上昇して脱毛を誘発するという機序が想定されており実際に男性型脱毛と類似したパターンを呈すること6),また,諸外国およびわが国での臨床試験により安全性プロファイルが明らかにされていることから,使用は否定されない。分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬に関しては,検索範囲でミノキシジル外用薬の有効性を検討した試験は見当たらなかった。分子標的薬による脱毛は,多様な標的を有する薬剤にわたってみられており,そのメカニズムが不詳である7)。MASCCのEGFR阻害薬による皮膚障害の予防と治療に関するガイドライン8)にも記載されているが,分子標的薬による非瘢痕性脱毛に対しては,非がん患者のエビデンスを参考に,ミノキシジル外用薬が使用されることがある。一方,分子標的薬による瘢痕性脱毛には,皮膚障害に準じてステロイド外用薬が用いられることがあり,ミノキシジル外用薬は一般的ではない。免疫チェックポイント阻害薬による脱毛についても免疫関連有害事象としてステロイド外用薬が使われることが多く9),ミノキシジル外用薬は一般的ではない。 カルプロニウム塩化物の外用薬もOTC医薬品として入手可能であり,男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版での推奨度はC1(行ってもよい)である4)。がん薬物療法による脱毛に対する有効性を検証する試験は,検索範囲では見当たらなかった。アデノシン(男性型脱毛症ではB,女性型脱毛症ではC1),t‒フラバノン(C1),サイトプリンおよびペンタデカン(C1)は医薬部外品であり,市販の育毛剤に含まれる。検索した範囲では,がん薬物療法による脱毛に対するこれらの育毛剤の有効性を検証する試験は見当たらなかった。わが国の発毛剤は血管拡張作用があるものが多く,育毛剤は血行を促進するセンブリエキス,イチョウ葉エキス,ニコチン酸アミド等を含有することがある2)。特に細胞障害性抗がん薬による治療中,発毛・育毛剤による頭皮の血流の増加が,毛包への抗がん薬の曝露を増やして脱毛を悪化させる可能性は指摘されているものの,これまで未検証である。 αリポ酸誘導体DHL‒HisZnNaを配合したローションは,わが国で産学連携により開発中である。わが国でアンスラサイクリンまたはタキサン系抗がん薬による術後化学療法を行う乳がん患者を対象に多施設共同,単群の第Ⅱ相試験が行われた10)。患者は化学療法開始時から毎日ローションを塗布した。101人中101人全員が,主要評価項目のGrade2以上の脱毛を発現し,DHL‒HisZnNaによる脱毛の予防効果は示されなかった。しかし,有効性解析を行った100人のなかで,71%(71人)の患者において,化学療法後3カ月の時点でGrade1または0に脱毛の回復がみられた。この結果により,DHL‒HisZnNaが化学療法誘発脱毛からの回復を促進する可能性が期待され,わが国で,補助化学療法を行う乳がんの患者を対象に,脱毛に対するDHL‒HisZnNaの有効性を検証する単群の第Ⅲ相試験(UMIN000014840)が行われた。症例登録は終了しており,結果は今後公表される予定である。CG428ローションは,植物性成分(柑橘類,カカオ,ガラナ,タマネギ)を含有するローションであり,化粧品である。サムスンがんセンターにおいて,化学療法誘発脱毛を有する乳がん体験者におけるCG428ローションの有効性を検討する小規模のパイロット研究が行われた11)。ローションを塗布する介入群(18人)とプラセボ群(17人)に割り付けられ,6カ月後,介入群とプラセボ群の毛髪密度は,ベースラインと比較してそれぞれ34.7%と24.9%増加し(p=0.37),毛髪の太さはそれぞれ19.8%と35.6%増加した(p=0.23)。毛髪密度についてはCG428ローション塗布による改善傾向はあるものの統計学的な有意差はなく,現時点では,化学療法誘発脱毛の再発毛の促進を目

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