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913試験について,50%以下の脱毛を成功と定義した場合の脱毛予防をアウトカムとして,メタアナリシスを実施した(図1)。この結果,リスク比(RR)は0.52〔95%信頼区間(CI)0.45‒0.61〕と,頭皮クーリングシステム使用により,脱毛予防成功割合が有意に高いことが示された。また,Nan-giaらの試験によると,頭皮クーリングシステム使用により,5例(5.3%)の無脱毛も期待できる。 重症度に関しては,客観的指標(外部評価者2)もしくは研究責任者4)が撮影写真を評価し,CTCAEv4.0のグレーディングでGrade0~1)と主観的評価3)(Dean Scale;Grade0~2,あるいはウィッグCQ 1学療法を行う乳がん患者に限定して,行うことを弱く推奨する。〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:B(中),合意率:100%(18/18)〕CQ化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に頭皮クーリングシステムは勧められるか推奨化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に対する頭皮クーリングシステムは,周術期化 背景・目的  脱毛症は化学療法の副作用の一つであり,患者のQOLに影響を与える。化学療法誘発脱毛の軽減を目的とした頭皮冷却には50年ほどの歴史がある。しかしながら,温度を均一に保ち,冷却時間を明確に規定したシステムとしての頭皮冷却は,FDAの承認を目指した2システム(DigniCap,Pax-man)の臨床試験を機に,ようやく科学的根拠と呼べるデータが蓄積されはじめるようになった。Rugoらのシステマティックレビューは,2017年2月までの10件の研究を解析し,654人の患者から構成された1)。そのうち523人(80%)が乳がん患者であり,全体のうち432人(66%)は主にアンスラサイクリン系薬剤投与の際の頭皮冷却を前向き,後ろ向きで解析しているが,経時的に一定の温度が保てない古典的な冷却方法(Gel cap,Cryogel bag,Chemocap,Spenco hypothermia capなど)が8件(80%)であり,ランダム化比較試験(RCT)は1件のみ2)であった。 以上より,化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に頭皮クーリングシステムは推奨されるかを検証した。 解 説  化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に頭皮クーリングシステムは勧められるかというCQに対して,合致するRCTが3編2)~4)みつかった。これらの試験で使用された頭皮クーリングシステムはDigniCapが1試験,Paxmanが2試験であり,実施されたクーリング時間は化学療法前に30分,化学療法中,化学療法後に60~120分であった。対象患者はすべて初期の乳がん患者であり,対象となったレジメンはアンスラサイクリンとタキサン,アンスラサイクリンまたはタキサンであり,そのうち1試験はタキサンを先に投与するレジメンを含んでいた。評価法はCTCAEv4.0またはDean Scaleが用いられていたが,どちらも50%未満の非脱毛を成功と定義していた。 検討が可能であったアウトカムは,①脱毛の予防および脱毛発現後の重症度の軽減について,②QOLであった。このほか,再発毛を促進する可能性も示唆されたが,メタアナリシスに耐えられる研究結果の蓄積を待ちたい。以下にアウトカムごとに解説する。①脱毛の予防および重症度の軽減について

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