89 Scalp cooling 無治療 Risk Ratio Events Total Events Total Weight M-H,Random,95%Cl47 57.7% 0.50[0.41,0.61] 25 26.7% 0.62[0.46,0.83] 17 15.6% 0.45[0.31,0.67]Study or SubgroupNangia J, 2017Smetanay K, 2019Bajpai J, 202047 17 14 155 Total(95%Cl)Total eventsHeterogeneity:Tau2=0.00;Chi2=1.84,df=2(P=0.40);I2=0%Test for overall effect:Z=8.26(P<0.00001)図1 メタアナリシス:頭皮クーリングシステムによる脱毛予防の成功割合78 47 25 17 95 28 32 89 100.0% 0.52[0.45,0.61]M-H,Random,95%Cl0.01 0.1 Risk Ratio100Favours[Scalp cooling]Favours[No scalp cooling]10 1 などを必要としたかで評価)が存在しており,Smetanayらの論文は非直接性に影響があることが考えられたが,メタアナリシスの結果では,頭髪全体の50%以上の脱毛は,頭皮冷却を実施しないすべての症例に起こり,頭皮冷却によって52%に抑えられる可能性が示されたことになる。評価時期に関して,1サイクル後,4サイクル後,6週以内,12週以内という短期の観察であったが,レジメン別の特徴もある程度明らかになった。②QOLについて 大規模RCTであるNangiaらの試験では,QOLは,EORTC,QLQ‒C30,HADS,BISの尺度を用いて評価されたが,頭皮冷却をして脱毛予防が成功した人と,頭皮冷却をしても脱毛を招いた人と,冷却をしなかった人の間に有意差はなかった2)。Smetanayらの試験では,QOLはEORTC QLQ‒C30とBR23を用いて調査され,両群に有意差を認めなかった3)。Bajpaiらの試験では,QOLはEORTC BR23を用いて調査されたが,冷却群で有意に高かったのは,唯一脱毛に関するスケールであった4)。Limitationについて;盲検化に関していえば,実施が困難であるうえ,ここで取り上げた研究で使用された化学療法レジメンでは,対照群が100%の脱毛を誘発するものであるため,非盲検が科学性を失うという懸念は最小限と考えてよいと判断した。頭皮冷却システムは,有意差をもって化学療法誘発脱毛を改善したが,レジメン依存性でもあった。興味深いことに,タキサンを先行させた場合のほうが,アンスラサイクリンを先行させるより,有意に成功率が高いという結果〔13/17(77%):5/15(33%)(p=0.0307)〕が示されている。リアルワールドにおいては,装着技術やそのほかの設定条件(温度,冷却時間)に依存する可能性がある。また,これを運用するためには,設備と人と時間と場所を確保する必要があり,また保険制度が適用できない環境においては,患者の費用負担の面で,経済性にも課題がある。これらの制約のなか,現時点では広く活用することに限界がある。QOL調査で,冷却群と対照群にほとんど有意差が出なかったことも,アピアランスに関するQOLを十分に反映できる尺度がないということかもしれないが,課題の一つである。さらに,取り上げた3つのRCTは,対象がすべて女性の早期乳がんであり,1年以内の短期的な観察結果が示されたにとどまっていた。長期的な有効性や,晩期の有害事象は今後の課題である。頭皮転移に関しては,Rugoらのシステマティックレビュー5)の結果はネガティブであったが,今後,他の臓器への転移も含めて,頭皮冷却システムが長期的にも安全で有効であるか否かを検証することは重要課題である。 頭皮冷却システムの有害事象については,使用回数に基づく有害事象頻度であり,試験ごとに評価方法が異なっており,メタアナリシスは実施できなかった。重篤な有害事象はなく,すべての試験で,寒気と頭痛が最も多く,ほかにめまい,悪心,しびれなどの報告もあった。脱落例について10Ⅰ.治療編‒化学療法
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