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BQ 2795 放射線治療中の皮膚洗浄により皮膚炎は悪化しない,もしくは軽減する傾向を認めるため,洗浄することが勧められる。Royらは,乳がん患者99人(ほとんどが部分切除術後)に対し,45~50Gyの放射線治療中の照射部位の洗浄を禁止する群(洗浄禁止群)と温湯と低刺激性石鹸による洗浄を許可する群(石鹸洗浄群)に分け,試験を行った1)。湿性落屑は洗浄禁止群で33%にみられたのに対し,石鹸洗浄群ではわずか14%であった(p=0.03)が,同時併用化学療法が洗浄禁止群に多かったこともあり,RTOG skin toxicity scores Grade2~3の皮膚炎発現と洗浄との相関は傾向がみられる(オッズ比0.4,95%CI 0.2‒1.0,p=0.06)に留まった。一方,体重,化学療法の同時併用,過線領域の存在は有意に相関していた。Campbellらは,乳がん患者99人に対し,乳房ないしは胸壁に対する放射線治療中の皮膚洗浄を,①禁止,②温湯洗浄,③低刺激性石鹸による洗浄の3群に分け,比較する試験を行った2)。照射線量を45~47Gyとし,46人でボーラスが用いられた。また,一部患者で9Gyまでのブースト照射が追加された。瘙痒感は4~6週で最も強くなり,ボーラスの有無にかかわらず,洗浄群で有意に軽いか同じであり,洗浄群でも石鹸洗浄群でより軽い傾向があった。疼痛は31%に出現したが,3群間に差はなかった。紅斑スコアは4~6週で最高になったが,洗浄群では両群に差はなく,時期によっては洗浄群は洗浄禁止群に比べ,紅斑が有意に軽かった。落屑スコアは少し遅れて6~8週でピークに達し,洗浄群は洗浄禁止群に比して有意に軽度であった。8週の時点で洗浄群では落屑は改善傾向であったのに対して,洗浄禁止群ではまだ増悪する傾向がみられた。温湯洗浄のみと石鹸洗浄との差はわずかであった。皮膚表面近くの線量を増加させるボーラスを用いた場合には皮膚炎がより強くなったが,これは皮膚線量の増加によるものである。Westburyらは,頭蓋照射時の頭皮洗浄について,109人を10週間の洗浄群と非洗浄群に分け,比較を行った3)。ただし,洗浄群でも洗髪は制限され,通常の頻度より少なくするように指導されBQ放射線皮膚炎の軽減に洗浄は勧められるかステートメント 背景・目的  以前は,放射線治療中は皮膚への刺激を避けるために照射部位に対する石鹸の使用はもちろん照射部位の洗浄すら避けるように指導されていた。これは患者のストレスとなったり,QOLを下げたりし得るものである。そこで照射部位の皮膚洗浄が急性放射線皮膚炎に及ぼす影響について概説する。 解 説  照射部位の皮膚洗浄が急性放射線皮膚炎に及ぼす影響を検討したランダム化比較試験は,乳房と頭部に関するものが2001年までに3件報告されており,2000年代に入ってからの新たな試験は認められていない。27

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