・化学療法による治療中,治療後の脱毛に関して,再発毛の促進や脱毛予防の化粧品・医薬部外品等(ミノキシジルを除く)の使用については,一部検証が始められた。・内分泌療法による治療中,治療後の脱毛に関して,高いレベルのエビデンスはないものの,ミノキシジル外用薬の使用は否定されない。・分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬による治療中,治療後の脱毛に関して,再発毛の促進や脱毛予防の化粧品・医薬部外品等の使用については,検証は行われていない。ミノキシジル外用薬は,男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(日本皮膚科学会)では推奨度A(行うよう強く勧める)とされており4),OTC医薬品として薬局等で入手可能である。化学療法誘発脱毛に対するミノキシジル外用薬の有用性についてはFQ2で取り扱う。内分泌療法誘発脱毛については,前向きに有効性を検討された試験は,検索範囲では見当たらなかった。乳がんの内分泌療法誘発脱毛と診断され,2009~2016年にメモリアルスローンケタリングがんセンターの腫瘍皮膚科クリニックに紹介された女性112人についての後ろ向きコホート研究では,ミノキシジル外用薬を使用し,評価可能であった46人中37人(80%)で,写真評価での中等度以上の改善がみられたと報告されている5)。この研究は前向きの比較試験ではなく,ミノキシジルの使用134Ⅱ.日常整容編FQ再発毛の促進や脱毛予防に化粧品・医薬部外品等の使用は勧められるかステートメント 背景・目的 がん薬物療法は薄毛から全脱毛までさまざまな程度の脱毛を起こし得る1)2)。医療者は,がん薬物療法中または薬物療法後の患者から「市販の育毛剤は脱毛に効果があるのか」という主旨の質問を受けることがある。 発毛・育毛・頭皮ケアのための頭髪用製品は「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」により,医薬品,医薬部外品,化粧品に分類される。品目としては,毛を生やすことを目的とする発毛剤(医薬品),脱毛の防止および既にある毛を育てることを目的とする育毛剤(医薬部外品),毛髪,頭皮を清浄し,健康に保つことを目的とするヘアトニック(化粧品)がある3)。患者からの「市販の育毛剤は脱毛に効果があるのか」という問いは,この法律上の分類にかかわらず,薬局・ドラッグストア等で入手可能な発毛・育毛・頭皮ケアのための頭髪用製品全般を指すものと考えられる。また,医薬品,医薬部外品は,がん薬物療法による脱毛の予防や治療のデータに基づいて承認されたものではない。したがって,本BQでは,薬局・ドラッグストア等で入手可能な頭皮ケアのための頭髪用製品全般(OTC医薬品,医薬部外品,化粧品を含む)を一括して取り扱うものとした。 解 説 細胞障害性抗がん薬,内分泌療法薬,分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬はいずれも脱毛を生じ得る。33
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