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d 感受性宿主対策192第9章 ● 感 染 症ラリア,鳥インフルエンザ(H5N1,H7N9),チクングニア熱,MERS,新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)を検疫感染症に指定し,世界の情勢を踏まえた検疫体制の強化を図っている。 検疫によりこれらの疾病の患者または保菌者が発見された場合,入国停止,隔離,停留,消毒などの措置がとられる。さらに,検疫感染症に感染したおそれのある者に対する入国後の健康状態の確認を検疫所が行い,健康状態に異常を認めた者については検疫所長が都道府県知事等に通知する規定が設けられ,水際対策と国内対策の連携強化が図られている。 なお,WHOにおいて,2005(平成17)年には,国際保健規則(IHR)が改正され,これまでとは大きく方向転換し,特定の疾病に限らず地域の公衆衛生に及ぼす影響の重大性,国際的なまん延の可能性,国際交通規制の必要性などに照らし国際的な公衆衛生の脅威となりうるあらゆる健康被害事案が報告の対象となった。c 感染経路対策 感染源となる患者やキャリアの排泄物や汚染物は,すべて滅菌または消毒して処理する必要がある。またインフルエンザのような経気道感染の予防については,換気を良くし,マスクの使用やうがいを心がけること。経口感染に対しては,手洗いの励行,食物の衛生的取り扱い,上水道の塩素消毒などの管理を徹底することが重要となる。また環境衛生の改善,すなわちネズミなどの病原体媒介動物,ハエ・蚊・ノミなどの昆虫の駆除なども重要となる。 感受性宿主対策は,次の2つに分けられる。 ①一般的抵抗力の増強:日頃から適正な栄養の摂取,過労の防止,十分な休養と睡眠,積極的な体力トレーニングなどにより,抵抗力の増強に努める。 ②特異的予防:予防接種は宿主に特異的免疫を与え,感染を防ぐうえで最も効果的な方法である。 予防接種(vaccination)の目的は各個人に免疫を与えることにより,個人の伝染病罹患を防ぐとともに,集団の免疫水準を維持し,集団を伝染病の流行から守ることである。 公衆衛生対策上極めて有効な手段と考えられ,従来わが国では,集団防衛が主な目的とされていたが,近年個人防衛の意義が重視されるようになった。

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