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❷ 感染症の予防a 感染症予防の原則b 感染源対策 感染症の予防対策は感染源,感染経路,感受性宿主の3要因に対して実施する。一方,感染症の予防の観点からも,一次予防から三次予防の段階が考えられる。病原体の種類により病気の進展も異なるので,予防対策の重点は病気により異なるが,一般には,感受性期では一次予防である予防接種のような特異的予防が,感染成立後では二次予防である早期発見・早期治療が特に重視される。 感染症発生時の防疫対策として最も重要なことは,感染源の発見とその隔離,除去であるが,感染源が国内に常在している場合と常に国外にある場合とで異なった対応がとられる。1 国内感染症対策 国内で発生する主な感染症については,各種の法令に基づいて患者の届出や隔離などの防疫対策がとられてきた。しかし,近年の感染症に関連する社会・保健・医療の状況の変化に伴い,新しい時代の感染症対策に向けた法体系の整備が緊要となった。 1999(平成11)年4月1日から,新たに「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下,感染症法と略)が施行されている。 この法律により主な感染症は,発生の予防,まん延の防止および患者の医療に関する総合的な対策が実施される。なお,国は2005(平成17)年に「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定した。 2008(平成20)年より鳥インフルエンザH5N1を2類感染症に位置づけ,新型インフルエンザ等感染症が類型化された。また,2012(平成24)年新型インフルエンザ等対策特別措置法が成立した。さらに2014(平成26)年の法改正により鳥インフルエンザ(H7N9),中東呼吸器症候群(MERS)が追加された。 2019(令和元)年11月末に中国で発生した新型コロナウイルス感染症は,2020(令和2)年2月にWHOによってCOVID‒19と命名された。わが国ではこの疾患を感染症法に基づく新型インフルエンザ等感染症,および検疫法に基づく検疫感染症に指定した。188第9章 ● 感 染 症▶▶

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