く,本CQについては「非常に弱い推奨とする」というSRの結論が報告された。これらのSR結果と患者のインタビューからの価値観,意向,益と害のバランスを含めてEtDフレームワークを作成した。ガイドライン作成メンバーによる推奨決定会議で議論を重ねた結果,患者教育の重要性は周知のことで,複数回の教育を行うことについて異論はないが,そのエビデンスの確実性(強さ)や益と害を示す根拠となる文献が乏しく,エビデンスの確実性(強さ)は「非常に弱い」とされ,推奨決定のための根拠となる文献が乏しいため,投票は行わず「推奨なし」と決定することに9名全員の合意を得て決定した。本CQについてはEVに関する情報提供や教育を複数回実施することを推奨するためのエビデンスは明らかにならなかったが,EVの早期発見,適切な対処には患者への教育(十分な情報提供と説明等)が不可欠であると考えられる。1件の症例報告ではA),患者にEVに関する情報や管理方法の教育が提供されていなかったことがEV発症の理由だったと指摘し,教育の重要性を示唆している。医療者がEVに関する知識や対処方法を備え,患者への情報提供や教育の役割を認識することも求められる。教育によってEVがさまざまな要因で発生し得ることの理解を促すことで,安心,安全な治療の実施につながるといえる。また,臨床においては,がん薬物療法を受ける患者に対し,治療に伴う副作用やその対処方法に関する情報提供や教育(オリエンテーション)は標準的に実施され,その中にEVの内容が含まれることが多い。患者に多様な情報を一度説明しただけで十分に理解し,対応できるようになるとは限らない。ESMO-EONSガイドラインでは,EVに関連した患者の要因として,患者がEVの徴候や症状の識別を行って早期に報告することの難しさが挙げられているB)。医療者は,患者が何らかの徴候や症状をEVと関連づけ,早期に報告できるよう個別性に応じて繰り返し教育することも必要である。本CQでは複数回教育することの根拠を示すことはできなかったが,個々の患者のEVのリスクを見極め,またEVに関する理解やセルフマネジメントの状況に応じて,適宜必要な情報の提供,教育を行う必要がある。特になし。今後は教育の効果あるいは害を示す研究を推進する必要がある。どのような教育方法や回数,タイミング等が効果的であるかについての評価研究が必要不可欠であることも議論を通40解説推奨適応の促進要因と阻害要因今後の研究課題
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