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63CQ 5減少」,害を「患者の苦痛の増加」「医療者の業務量の増加」とした。RCT2)は,EVとinfil-tration(漏出)が測定されていたことより,対象にがん薬物療法薬を含むと考えられるが,EVの発生には差がなかった。メタアナリシス1)は,infiltrationを評価しており,SRでは「infiltration」を本CQの「EVの減少」のエビデンスとして評価した。この文献では,72〜96時間ごとに末梢静脈カテーテルを定期的に入れ替えることで,infiltrationは,おそらく減少するという中程度の確実性のあるエビデンスと評価されていたが,評価対象ががん薬物療法薬以外であることより,エビデンスの確実性(強さ)は「弱い」と判断した。「静脈炎の減少」は化学性静脈炎ではなく血栓性静脈炎(thrombophlebitis)で設定されており,発生に差がなかった。「患者の苦痛の増加」が測定されていたのはRCT2)のみであり,予防的な入れ替え(96時間ごとの交換)群の疼痛が低かったが,カテーテル入れ替えの処置に伴う患者の苦痛を測定したものではないことより,エビデンスの確実性(強さ)は「弱い」と判断した。「固定材による皮膚の炎症の減少」「医療者の業務量の増加」に関する文献はなかった。以上より,全体のエビデンスの確実性(強さ)は「弱い」と判断した。◆益と害のバランス益として,72〜96時間ごとの定期的な入れ替えは,infiltration予防においてのみ中程度の確実性が示されているが,がん薬物療法薬を対象とした文献は見当たらなかった。害について評価できる文献は乏しいものの,末梢静脈カテーテルの入れ替えに,患者の苦痛と医療者の業務量の増加が伴うことは周知のことであり,害を「中」と評価した。以上より,末梢静脈カテーテルの定期的な入れ替えは,害が益を上回ると判断した。◆患者の価値観や希望文献は見当たらなかった。患者インタビューで「(点滴の)抜き差しが嫌なので,(EVが)起きれば困るとわかっていても,漏れていないのであれば,続けて欲しいと思う」「血管を探られている時はすごく嫌」等,必要性を理解した上でも,入れ替えに伴う苦痛の耐えがたさが語られた。特に穿刺困難な患者では,予防的な入れ替えに対する拒否感が強いという意見もあり,予防的(定期的)な入れ替えは許容しづらいという価値観で一致していると考える。◆コストや資源費用対効果は,臨床症状による入れ替えが優れている1)。費用はカテーテルをはじめとする医療材料の種類により相違があるため,程度については不明である。◆推奨決定の過程Infiltrationは,定期的な入れ替えで,おそらく減少するという中程度の確実性のあるエビデンスがあるものの,EVについてのエビデンスはなく,がん薬物療法におけるEV予防効果は限定的と考えた。患者の意見や希望,ならびに,作成メンバーの臨床経験より,問題がない末梢静脈カテーテルの入れ替えに伴う患者の苦痛と,得られる益について議論した結果,1回目の投票で,9/9名(100%)の合意で「末梢静脈カテーテルの定期的な入れ替えを行わないことを弱く推奨する」と判断した。なお,本ガイドライン2014年版(第2版)A)とは

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