報告されたイベントが小さく結果の評価ができなかった。そのため,すべての結果のグレードを1ポイント減少した。よって全体的なエビデンスの確実性は低いほうへ統合し「非常に弱い」と判定した。 3 益と害のバランス評価上記で記載した通り,栄養カウンセリングを行った結果,介入群でエネルギー量とたんぱく質摂取量が増加することが示された。その他のQOL向上効果や身体症状の改善については検証が十分になされていなかった。以上より,管理栄養士などによる栄養カウンセリングの望ましい効果(益)は「中程度」と判断された。一方で経口栄養補助食品に関連した嘔気,下痢,腹痛を報告した論文が1編検索されたが,有害事象として浮腫を報告した文献はなかった。よって,予期される望ましくない効果(害)は「わずか」と判断した。以上より,望ましい効果と望ましくない効果のバランスは「介入が優れている」と判断した。 4 患者・市民の価値観・希望がん罹患経験者代表2名を含むガイドライン作成班で投票により決定したアウトカム重要度はQOLが9/10点,身体症状の改善(食思不振,嘔気,腹水,消化器症状,倦怠感含む)が9/10点であった〔その他,有害事象(浮腫など)8点,身体機能(歩行速度,握力)7点,全生存期間7点,栄養素等摂取量の増加(エネルギー,たんぱくを含む)6点,医療費5点,身体計測値(浮腫を除外した体重増加,筋量などを含む)4点〕。栄養カウンセリングによる効果が示された栄養素等摂取量の増加はアウトカム重要度が中程度と判断されている。根治不能な進行性・再発性がんに罹患し,抗がん薬治療に不応・不耐となった患者・家族にとって,栄養カウンセリングで栄養素等摂取量が増加することは,生きる希望につながることが予想される。しかし,その一方で栄養素等摂取量の増加にのみ重きを置くのではなく,その過程において食事を楽しみながらどう摂取するかなど患者によって何に価値を置くのかはばらつきがあると考える。そのため,人々がこれらのアウトカムをどの程度重視するかに関し,「重要な不確実性やばらつきの可能性あり」と判断した。 5 資源利用と費用対効果必要資源量・資源利用については,必要に応じて経口栄養補助食品や食材の購入,栄養カウンセリング料が発生する可能性があることから対象者の経済的,地理的,心理的要素によって影響が発生する可能性があるため「さまざま」と判定した。費用対効果については,医療経済評価として検索を行った結果,最終的に組み入れられる文献は同定されなかったため,「採用研究なし」とした。 6 推奨グレーディング決定の工程「介入支持を弱く推奨」が100%であったため,弱い推奨となった。 7 今後の研究根治不能な進行性・再発性がんに罹患し,抗がん薬治療に不応・不耐となった成人患者に対して,管理栄養士などが栄養カウンセリングを行うことは,エビデンスの確実性は非常に弱く,限定的ではあったが,エネルギー量やたんぱく質量などの栄養素等摂取量が改善されることが明らかとなった。しかし,QOLや身体症状など主要なアウトカムについての効果148
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