1 関節可動域運動 29
状のみで関節包内運動が決まるわけではなく,関節包の緊張や靱帯,筋の走行や緊張などによって滑
りや転がりが変化することに注意が必要である
2)
。
・関節軟骨の変形による構成運動の障害では改善が困難だが,その他の要因では関節包の伸張や構成運
動の改善が有効である。
2)関節包の癒着や短縮
・関節周囲の手術や,長期間の固定により生じる。
・関節角度によって伸張される部位と弛緩する部位が存在するため,安静位で弛緩する部位への伸張を
行う(例えば肩関節においては内外転中間位で下方の関節包が緩む)。
3)筋・腱の短縮および筋膜の癒着
・ギプス固定,外傷,手術による筋・腱の短縮や筋膜の癒着により生じる。
・柔軟性を改善させるため筋の持続伸張を行う。持続伸張により筋長の延長やコラーゲン線維の可動性
改善を図ることができる
3)
。
4)筋緊張増加
・エンドフィール
3)
は筋性(
表1
)であり局所的で持続的な筋緊張の亢進状態である。
・筋の伸張により生じる筋緊張増加には痙縮と固縮がある
1)
。どちらも伸張反射の亢進が要因であるが,
痙縮は急速な伸張を加えることにより筋緊張が増加する速度依存性が特徴である。一方で固縮は速度
に依存せず一様の抵抗感を示すことが特徴である。
・痙縮に対しては,速度依存性による筋緊張増加のため,ゆっくりと動かす他動運動としてゴルジ腱器
官のⅠb抑制を用いた持続伸張が有効である。また最大収縮後の弛緩作用や拮抗筋の収縮による相反
抑制などを利用したPNF(proprioceptive neuromuscular facilitation)応用ストレッチング
2)
なども
有効である。また固縮に対しては,他動的な伸張による筋緊張増加のため,自動運動を用いた関節可
動域運動が有効である。
表1
エンドフィールの種類(才藤栄一 監:PT・OTのための臨床技能とOSCE コミュニケー
ションと介助・検査測定編.p142,金原出版,2015.より抜粋し作成)
正常なエンドフィール
軟部組織性
膝関節を屈曲した時の大腿後面と下腿後面の軟部組織が接近するような柔ら
かい抵抗感
筋 性
膝伸展時に股関節を屈曲した時のような,ある程度硬く,弾性力のある抵抗感
筋の伸張で生じる
関節包・靱帯性
肩関節を外旋,股関節を内旋した時のような,しっかりとした抵抗感
わずかなあそびがある
関節包・靱帯の伸張で生じる
骨 性
肘関節を伸展した時のような,突然起こる大きな抵抗感
骨と骨の接触で生じる
異常なエンドフィール
軟部組織性
通常では制限されない角度で起こる
浮腫や滑膜炎などで生じる
筋 性
通常では制限されない角度で起こる
疼痛や筋硬結,筋の短縮,筋スパズム,筋緊張の増加などで生じる
関節包・靱帯性
通常では制限されない角度で起こる
ゆっくりとした伸張で若干延長する
関節包,靱帯の短縮などで起こる
骨 性
通常では制限されない角度で起こる
一般的に手術以外では改善が見込めない
虚 性
通常では制限されない角度で疼痛や抵抗感が生じ,その後,最終抵抗までの開
きを感じる
防御反応,滑膜包炎などで生じる
バネ様遮断
最終域で跳ねるような終止感がある