1 関節可動域運動 35
1.挨拶・自己紹介を行い,患者の氏名を確認する。
2.関節可動域運動を行う旨を患者に伝え了承を得る。
3.関節可動域運動に適した環境設定を行う。
・左肩関節屈曲運動が行いやすいよう枕を右へ寄せる。
・安定した臥位姿勢をとり(支持面を増やすため膝関節の下にクッションを置く)リラックスさせる。
4.肩関節屈曲の運動について患者にわかりやすく説明する。
・療法士がデモンストレーションを行い,運動の内容を患者に専門用語を使わずわかりやすく説明する。
・他動的関節可動域運動を行う際,疼痛や恐怖心による防御性収縮が出現しないように,息を止めず
リラックスするよう説明する。また疼痛が出現したら療法士に伝えるよう依頼する。
5.肩甲骨と肘関節の可動性を確認し,肩関節屈曲運動を行いやすい状態にする。
・肩関節の他動的関節可動域運動の事前準備として,肩甲骨や肘関節の可動性を確認する旨を説明す
る。
・肩関節屈曲運動は肩甲上腕関節,肩鎖関節,胸鎖関節,肩甲胸郭関節などの複合運動であるため,
肩甲骨の挙上と下制,外転と内転,上方回旋と下方回旋の可動性を確認する。
・二関節筋(課題では上腕二頭筋,上腕三頭筋)が関わるため,上腕二頭筋の筋緊張や肘関節の可動
性も確認する。その際,筋を強く圧迫しないように注意する。
・筋緊張増加による肩甲帯挙上位や肘関節屈曲位の改善を図り,肩関節屈曲運動を行いやすい状態に
する。
6.肩関節屈曲運動を他動運動で確認し,可動範囲や疼痛,エンドフィールを確認する。
・肩関節他動的屈曲運動を行い,可動範囲や疼痛,エンドフィールを確認する。
・可動域運動の効果を確認するため,運動前の肩関節屈曲の可動域を測定する。角度計で測定するこ
とが望ましいが,試験時間の都合,目視で概算する。
・疼痛が生じる場合は,疼痛の部位や種類,程度などを確認し,可動域制限因子となっていないか確
認する。
・エンドフィールは,療法士の受ける感覚と患者が感じる感覚との整合性を確認し,患者に普段と比
べて変化がないか確認する。
7.他動的関節可動域運動を行う。
・療法士は自身の身体に負担がかからない姿勢で可動域運動を行う。立位で膝を伸展した状態で体幹
を深く屈曲した姿勢は腰痛を引き起こしやすい。
・療法士は筋緊張増加による可動域制限を生じさせないように患者の上肢を把持する。重力のかかる
手 順
図6
肩関節付近の操作
療法士の母指で患者の肩関節前面を,
示指で肩関節後面を把持し関節包内運
動を操作する。また,その他の指で肩
甲骨を把持し肩甲骨運動を操作する。