セット間の休憩時間を30秒から1分程度とる。筋中のクレアチンリン酸によるATPの再合成 は,30秒で約半分補充されるため,この程度の休憩時間が必要である。2分を超えると定常状態に戻り,セットを組む意味がなくなる。 最大伸長位から最大短縮位に及ぶ運動にすること。これにより多くの筋繊維に刺激を与えること少ない負荷で多くの回数を行う方が楽そうにみえるが,本当にそうか?運動強度と反復回数をかけ合わせると,使用する運動エネルギーが計算できる。1RMを100%とすると,3RMならば90%の負荷を3回ということになり,負荷の合計は270%となる。5RMならば80%の負荷が5回で400%にもなる(表5)。臨床では積極的な筋力増強といいながら,数をこなす訓練を行い,疲労を蓄積させてしまう例も見受けられる。5)●等尺性運動について特に理由もなく,運動効果を考えず,当たり前のように等尺性運動を行わせる理学療法士が増えているように感じる。等尺性運動は過去に奇跡のトレーニングのように扱われた時期もあったが,実は等張性運動のような動的なものよりもトレーニング効果が少ない。また,その効果も運動開始後,平均6〜8週間で頭打ちとなり,以後は逆に低下していく(等張性運動では12週)。また,静的な運動と動的な運動とでは神経─筋調整機構の働きが大きく異なり,両者の間に相関はみられない。また,等尺性収縮運動を行った角度から20〜30°も離れると,ほとんど筋力は増強されない。つまり等尺性収縮運動により鍛えられた筋では,日常生活で使用されるような関節運動を伴うような動作には,あまり役立たないということになる(ただし異論も多く,大腿四頭筋では伸展位での運動が屈曲位でも効果的であったという報告もある)。したがって,骨折後のギプス固定や関節の運動が禁止されている場合などを除いて,使用範囲は補助的手段にとどめた方がよい。6)●筋力増強の原則 高負荷で少ない回数しか行うことのできない負荷を与える。 1セットの運動では十分な刺激量を与えにくいので,数回のセットを組むこと。通常3〜4セット。5セットを超えると乳酸が蓄積し始め,十分な張力を得ることが困難になる。が可能となる。 Ⅱ. 理学療法運動エネルギー表5 等張性筋力増強訓練の 負荷量と運動エネルギー23理学療法の教科書によく出てくる10RMは,ご存じの通り10回反復最大負荷(10 repetition maximum)のことですが本当に理解していますか? これは,10回しか反復できなくて,11回目には絶対同じ負荷では運動を行えないという意味です。同様に1RMは1回こっきりしか行えない負荷を表しています。でも多くの人は,1回おもいっきり力を出させると理解してしまっているのではないでしょうか。そこでもう1回連続できたら,1RMではありません。運動強度1RM100×1=1003RM95×3=28590×5=4505RM10RM60×10=6004)●運動強度と運動エネルギー 1RM?●10RM?●本当に知ってますか?
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