図6-3a.上肢を挙上する動きを「肩関節屈曲」とよび,制限がなければ概ね180°の可動域がある。乳がん腋窩リンパ節切除後では,術後1カ月で30°〜40°可動域が制限される。b.髪をとかす(特に後ろ)の際には,肩関節は屈曲・外転・外旋することが必要の肩関節可動域制限や上肢筋力低下,疼痛といった上肢機能障害が起こりやすい。上肢筋力低下や疼痛は,上肢で行うすべてのADL,家事動作,仕事,趣味活動などを制限し,QOLを低下させる。これらの機能障害は,患側上肢機能に関して適切なリハビリテーション治療を行うことで軽減することができる。特に周術期から,リハビリテーション治療や生活指導をしっかりと行うことは,長期にわたる機能障害やADL制限を予防することにつながるため重要である。腋窩リンパ節郭清を伴う乳がん手術を施行される患者が主な対象となるが,センチネルリンパ節生検に留まった場合や乳房切除のみの場合でも,術後にしばしば肩関節可動域制限を認める。したがって,これらの患者も対象となり得る(後述)。乳がん術後の上肢機能障害に対しては,患肢管理などに関する生活指導・肩関節などの関節可動域訓練・上肢筋力増強訓練を含めた,包括的リハビリテーション治療が必要である。1.誰が行うのか?「すべて看護師が行う」「すべてリハビリテーション専門職(理学療法士もしくは作業療法士)が行う」「生活指導は主に看護師が,関節可動域訓練や筋力増強訓練はリハビリテーション専門職が行う」など,施設によって対応はさまざまである。しかし,生活指導のみ行う場合やリハビリテーション治療の指導書30゜となる。ab肩関節可動域とADL●対象となるのはどのような患者か?●誰がいつどこで行うのか?104第6章 乳がん・婦人科がん
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